おはなし

□夏合宿イブ*18禁
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<夏合宿イブ>

「さてと!こんなもんかな……?とりあえず忘れ物はないよな?」

明日から譲の所属する弓道部は一週間の夏合宿に入る。

その準備をしていた譲は、確認のために辺りを見回した。

勉強机の端の方に、鎮座している人形に目が止まった。

何気なく置かれているようで、実は大切に置かれているそれは

あるゲームのキャラクターを模して作られている。

以前テレビで、そのキャラクターを見た時に

『あのキャラ、なんかお前に似てないか?』

本当に何気なく、口にしてしまっただけなのに…

『俺に似ているんだろう?ゲーセンで見つけたから。

俺が傍にいない時にあんたが寂しくないようにね。』

いたずらっぽく笑うヒノエのおかげで

こうして譲の手元に来る事になった。

「お前も連れて行くか…明日から暫く、本物のお前には会えないからな」

人形に話し掛けながら、大事にバックに詰めていく。

高校生にもなる男が人形なんて…友達に見られたら恥ずかしいな。

そんなことを考えながら。

「嬉しいねぇ。そいつも連れて行ってくれるのかい?」

急に後ろから声を掛けられ、驚き振り返るとヒノエが入り口のドアに

もたれかかって、譲を見ている。

「なんだよ、入ってくるならノックくらいしろよ」

「ノックならしたさ。返事がないからちょっと覗いたら、あんたが

あんまり熱心にそいつを見つめていたんでね」

可愛い事をしてくれるから、我慢できずに入ってきたんだとヒノエが笑う。

「なっ!お前、見てたなら声くらい掛けろよっ!」

「そんな勿体無いことできる訳ないだろう?そいつをしまう前に声を

掛けたら、あんたそいつを置いて行くに決まってるからさ」

「なぁ、譲?明日からどうしても行くのか?」

バックの前に座る譲を、後ろから包むようにヒノエが抱き寄せる。

とくん。とくん。

お互いの心臓の音が聞こえそうな程の距離。

ヒノエは譲のつむじの辺りに唇を落とした。

こめかみにもひとつ…。

首筋にもひとつ…。

「お前っ!何してん……」

抗議をしようと、譲が振り向いた瞬間に

唇にもひとつ…。

軽く触れるだけの優しい口付け。

頬にひとつ…まぶたにひとつ…。

繰り返される甘い甘い口付け。

やがて目が合い

クス…

どちらからともなく笑い合う

またひとつ、唇に。そしてもうひとつ…

啄ばむ様なバードキス

クスクス…。

目が合うたびに笑い合い……

優しい優しい口付けは、やがて深いものへと変わっていく。

名残惜しそうに離された互いの唇を艶やかな糸が伝って切れた。

そしてまた

クスリ。

見つめあい、笑い合う。

どちらからともなく、服を脱ぎ

どちらからともなく、また笑い合った。

そして、それが合図かのように

見つめ合いながら、その場に倒れこんで行く。





首筋から鎖骨…鎖骨から胸へ

ヒノエの唇が優しく譲を包んでいく。

「あっ…!」

小さな突起を見つけ、優しく食むと譲の体が小さく跳ねた。

それに気を良くしたかのように、ヒノエは執拗にそこを愛撫する。

「やめろ……そこばっかり…もう」

「ふふ。あんた、本当にここ…弱いね。」

「ばっ!そんなんじゃないっ!くすぐったいだけだろ…」

「ふーん。くすぐったい…ね。いいよ、じゃあ別の場所にしようか」

もう一度深く口付け、ヒノエの手が譲の中心部に触る。

そこはもう十分に熱をもっていて……。

譲は恥ずかしそうに身をよじった。

「ふふ。もう、こんなになってるのに…それでもくすぐったいのかい?」

「っ!…じゃあ、お前はどうなんだよ!」

「馬鹿だね、あんたのこんな姿を目の前にして、どうにもならない訳が

ないだろう?なんなら触ってみるかい?」

「馬鹿っ!いいよもう、聞いた俺が馬鹿だった…」

残念だね、と言いながらヒノエの手が再び譲の中心に向かう。

そこをゆるゆると扱きながら、貪るように口付けを交わした。

譲の嬌声ごと絡め獲るような激しい口付けを。





くちゅり。



静寂な部屋に、水音と譲の嬌声だけが響く。

ヒノエは譲から指を引き抜き、口内に放たれた譲のものを飲み下す

そして、息の上がる譲の髪をかき上げ、おでこに口付けた。

「譲…大丈夫かい?なんなら少し休もうか?」

「ん…。俺なら大丈夫だから…このままじゃ、お前がつらいだろう?」

「ふふ。譲は優しいね、そんな可愛い事を言われたら…さすがの俺も、

もう我慢できないよ?……じゃあいいかい?いくよ」

「ああ、早くきてくれ…」

譲の後部にヒノエ自身があてがわれ、ゆっくりと挿入されていく。

何度も繰り返された行為。

それでもこの瞬間だけはどうしても慣れる事ができずに力が入る。

指とは比べられない質量に、譲の体が段々とずり上がる。

「譲。力を抜いて?譲を傷つけたくないんだ…ゆっくり息を吐いて

……そう、それでいいよ」

ヒノエは譲の手を掴み、自分の首に回させた。

そして、譲の腰を押さえると一気に貫いた。

「…あぁぁ…っ!」

悲鳴のような嬌声が響き、ヒノエの肩に譲の爪が食い込んだ。

「辛いかい?大丈夫、もう全部入ったからね」

譲の気をそらすように、何度も額や頬に口付けを落とす。

譲が落ち着くのを待ち、ゆっくりと煽動を始めた。

「あぁ…あっ…。ヒノ…ヒノエ」

嬌声と共に自分を呼ぶ甘い声に、ヒノエはどんどん高まっていく。

ぽたり。

ヒノエの汗が譲の頬を濡らし、譲の汗と混ざり流れ落ちる。

それを掬い獲るように、譲の頬に唇を這わせた瞬間…。

ヒノエの肩に回された譲の腕に力が入り、ヒノエの頭を引き寄せた。

「ヒノエ…キスを…」

「ああ、なんでもあげるよ。全てあんたの望むままに、俺の全ては

あんたのものだ…」







「明日から一週間…か。長いな……」

短いまどろみから覚醒した譲がふと呟いた。

「まあね。じゃあ行くのをやめるかい?それはできないんだろう?

なら行けばいいよ。なーに、たまに会えない日があるくらいが

燃え上がるってもんだろう?」

「そうだな。会えなくてもお前をいつも感じることはできるし…

お前の代わりはちゃんと連れて行くから…」

「ふーん。妬けるねぇ。あんな人形を贈るんじゃなかったかな?」



クス。

クスクス…。



二人の囁くような笑い声が長く、優しく響いている。

夏合宿を明日に控えたそんな前夜。


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