おくりもの
□共同作業。
1ページ/1ページ
<共同制作。>
「なぁ…お前ほんとにできるのか…?」
「まぁ、見てなって」
これで一体何度目か…。
ゆずるはずっとオレの側に立って見ている。
余程の心配性なのか……。
それとも余程の料理好きか……。
オレだって見ちゃいらんない程、下手って訳じゃないと思うけど。
たまにはオレが作ってやろう。
なんて、思い立って始めた料理。
作り始めた途端に帰ってきて、ずっと不安顔。
ったく、出来上がりを見せて喜ばしてやろうと思ったのに。
「ところで…お前、料理なんてしたことあったか?」
「ふふ、そんなにオレのことが気になるかい?可愛いねぇ…」
「茶化すなよ、手馴れてるから気になっただけだよ」
「ごめんごめん。怒ったかい?」
「別に怒ってないけど。で?」
「もちろん初めてだよ、心配かい?」
可愛いねぇ…目をまん丸にして驚いてる。
あんまり可愛いから口付けてやったら、今度はほんとに怒られた。
怒ったって可愛いから良いんだけどさ。
ってあんまりゆずるにばっかり構ってると料理が焦げちまう。
肉を炒めてる鍋に、切った野菜を入れて炒める。
これから後はどうするんだ?
「お前…本なんて見ながらやってんのか?」
「初めてだからね」
「そっか…。ええと、ここにだし汁を入れるんだ」
「ふふ、見てらんなくなった?じゃあ一緒にやろうか」
「そういう訳じゃないけど…」
「いいよ、あんたとの初めての共同制作も悪くないからね」
「ばか、そういうこと言うなよ」
「ほら、よそ見してるとヤバイんじゃないのかい?」
ふふ、慌ててだし汁を入れてる。
ほんとは作ってやりたかったけど…。
うん、こういうのも悪くないねぇ。
「ほら、一緒にやるんだろ?見てないで手伝えよ」
「へーへー」
手を出した途端に生き生きとし始めてる。
やっぱりゆずるはこうしているのが似合うねぇ。
オレなんてもう、手を出す暇もないけどね。
ゆずるがそれで良いなら良しとしてやるよ。
「なぁ…だけど、なんで肉じゃがなんだ?」
「ん?新婚家庭の定番なんだろ?」
「…ばかかお前…」
初めての共同制作の肉じゃがは、
いつものゆずるの味になっちゃったけど。
こうやって2人で何かをするのも悪くない。
ずっと一緒に、こうして作り続けていこうな、ゆずる。