おくりもの

□有川兄弟の災難。
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「兄さん…わかるように説明してくれよ」

「知るかよ…俺に聞かないでくれ!」

「だったら誰に聞けばいいんだよ」

「諦めろっ!」



何故か有川邸に住み着いた、自称従兄弟の銀髪兄弟。



「だって…知盛…壇ノ浦で死んだんじゃないのか?」

「…俺、それしらねぇ…」

「大体…銀って……平泉パートから出てくるんじゃないのか?

これって迷宮後の設定だろ?」

「お前…何訳わかんないこと言ってんだ…?」

「あっ…いや…」



見た目は美しいが中身が…げふっ…ぐふ…。



「でもなぁ…なんであいつらが俺らの従兄弟なんだ?」

「知るかよ!俺に聞かないでくれ!」

「だって…お前…おかしいだろっ!?」

「…諦めろよ…」



とっ、とにかく!今日も今日とて有川邸に…災いを…。

いや、有川兄弟に災難をもたらしている。





<有川兄弟の災難。>



*CASE 1 学校から戻ると。





「ただいまって…銀っ!?」



玄関を開けると、飛びついてくる大型犬。

…ではなく。

銀髪兄弟の弟、銀。

本当に飛びついてくる訳ではないのだが…。

玄関を開ければ、待ってましたと言わんばかりに

抱き上げられるのだから、さして変わりはないだろう。



「譲、おかえりなさい」

「ちょっ…銀っ!離せっ!!ば、ばかっ!落ちるって…」

「ふふ、絶対に落としたりはいたしません」

「いいから離せっ!!」

「譲、暴れたら危ないですよ」

「だったら離せーーーっ!!」

「くっそぉ…出遅れちまったか…」



有川譲。身長180センチ…決して小柄とはいえない。

それを抱き上げ、満足そうに微笑む銀。

この笑顔の下が気になる所だが、今はそれは置いておこう。

とにかくアレだ、絵的には少しも微笑ましくない。

微笑ましくはないが、将臣にとって、譲は可愛い。

毎日繰り返されるこの状況から譲を守ろうと、

銀を見張っていたのだが不意をつかれた。



「しげ…じゃねぇ、銀!譲を離せっ!!」

「譲…私は、あなたと少しの間も離れていたくはないのです。

それでも、あなたが学校というものに行っている間は

ずっと我慢しているのですから…ね?ご褒美をください」

「ご褒美なんてあるかっ!いいから離せ!!」

「クッ…褒美なら…俺のもの…だな…。

これだけ…じらされたんだ…俺を…楽しませてくれるんだろう?」

「おわっ!知盛っ!?お前どっから沸いて出た?って…いつものことだな

こらっ、知盛!譲に触んなっ!!」



突然降って沸いた訳ではない。

いくら知盛といえ、それは流石に無理だろう。

いや、知盛ならやりかねないのか?ややっ、流石にそれは……。

……ああ、訳がわからないっ!!

とにかく、作者泣かせのこの男、銀髪兄弟の兄である。

どこからか沸いて出てくるなり、銀の手から譲を奪い取った。

そして早々に譲の制服を脱がし始めていたりする。



「知盛っ!?おまっ、こんな所で脱がすなー!」

「譲、場所じゃねぇだろ…。知盛、てめーいい加減にしやがれっ!」

「兄上…譲を返して下さい」

「うわっ!銀ひっぱんなっ!!」

「クッ…譲…お前はこれ以上……俺をじらそうというのか?」

「いい加減にしろ!!いいから早くお、ろ、せっ!!」

「兄上、譲が嫌がっています」

「銀…それをお前が言うのか?や、んなことはどうでもいいだろ俺!

知盛ぃっ!いいから譲を放せーーっ!」

「面白い…そうやってじらしながら…俺を虜にするつもりか…」

「譲…どうか私だけを見てください」



知盛と銀による譲争奪戦。

争奪戦を繰り広げる2人は、喋るペースがアレだけにわりと静かで。

ぎゃあぎゃあと喚くのは争奪されている譲と。

譲の奪還を謀る将臣の2人。

なんとも異様な光景である。



「もう、お前らには近づけさせねぇ…」

「ちょっ…兄さん…そこどいてくれ、部屋に戻れない…」

「うるせぇ…あの悪魔達からお前を守ってんだ、少しくらい我慢しろ」

「や、あり難いけど…とりあえず部屋に…」



奪還した譲の前に立ち塞がり必死に守る将臣と。

やっと開放されたのに、未だ玄関から動けない譲。

この兄弟の災難は、残念ながらまだまだ続く。

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