おくりもの

□レーダー。
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<レーダー。>

真っ青な空の下、のんびりと一人歩き。

たまにはいいよね。

なんて、こっそり出てきちゃったけど…。

やっぱり皆、心配してるかなぁ?



最近ちょっとだけ平和になった京の町。

たくさんのお店が並ぶこの通りは

人通りも激しくて、皆が活気に溢れてて。

なんだかすごく楽しくなってくる。



うきうきと周りを見回してたら

前方に、見覚えのある後姿を発見。

蒼い髪と草色の髪。

長身の男の子2人組なんて

将臣君と、譲君の他にいないよね。



よーし、久しぶりにアレやっちゃおう!

昔から譲君には成功した事ないけど…。

もしかしたら、今度は成功するかも知れないし。



気配を絶って、足音を忍ばせる。

後ろからそーっと近づいて……



「先輩?」

「あーあ…またバレちゃった。」

「望美かぁ!お前またやったのか?凝りねぇ奴だな」

「だって、今度は成功するかと思ったんだもん」

「先輩、一人で出歩いたら危ないですよ?」

「ごめんなさい」

「ま、いいじゃねぇか!もう帰るところなんだろ?」

「うん。そしたら前を歩く2人が見えたから…

久しぶりにやってみたくなっちゃって」



そう、後ろから近づいて驚かせる。

そんな簡単なことが、昔から譲君には成功したことがなくて

将臣君はわりと簡単に引っかかってくれるのに。



「しっかし、お前も凝りねぇよなぁ。

譲には一度も成功したことねぇだろ?」

「そんなことないだろ?」

「ううん、譲君にはいつも先に気付かれちゃうよ。

だから昔ね、将臣君と話してたことがあるんだよね」

「ああ、レーダーか」

「そうそう、レーダー!」

「レーダー…ですか?」



譲君は、右手を首のところに当てて

目を丸くして不思議がってる。

やっぱり本人に自覚はないみたいだね。



「望美レーダーだよ。

お前、昔っから望美の気配を悟るの早かったもんな」

「そうそう、迷子になった私を見つけてくれるのも

絶対に譲君だったもん」

「そ、そんな事ないですよ…」

「そんな事あるんだよ?だから将臣君が名付けたの」

「望美レーダーって、な?」

「うん!」

「か、からかうのはやめて下さいっ」



あーあ。譲君、先に一人で歩いて行っちゃった…。

皆心配してるから早く帰りましょう。

なんて。一人でどんどん歩いて行っちゃう。

照れてるだけだよね?

将臣君と顔を見合わせて、後ろからついて歩く。



「あいつの、ああいう所も変わんねぇなぁ…」

「うん、そうだね。だけど、変わった事もあるよね?」

「ん…なんだ?変わったことって…」

「レーダーだよ」

「ああ、レーダーな!」

「うん。もう私だけのレーダーじゃなくなっちゃった」

「ま、仕方ねぇよな。あいつも大人になったって事だろ」



ちょっとだけ寂しくなって。



「走ろっか?」

「…だなっ!」



譲君の所まで、将臣君と並んで走る。

すぐに追いついて、また3人。

譲君を挟んで、並んで歩いて。



「あれ…なんか譲君、そわそわしてる?」

「んとだな、お前どうしたんだよ?」

「いや……ヒノエが……」

「ヒノエ君?」

「ヒノエがどうかしたのか?」

「……ちょっとすみません…」



譲君、本当にどうしちゃったのかな?

急にきょろきょろ周りを見回したかと思ったら

突然、木の下に歩いて行っちゃった。



「ねぇ…将臣君、譲君どうしたのかな?」

「ん?アレじゃねーの?」

「…そっか」



最近、譲君のレーダーはヒノエ君にも反応するんだよね。

だからきっと今もそうなんじゃないかって。

将臣君はちょっと呆れ顔。

私もちょっと寂しいなぁ。なんて思ったら悪いかな?



「お前、そんなところで何してるんだよ?」

「っしょっと。ん?あんたを待ってた」

「お前…やっぱり馬鹿だ」



譲君が見てた木から、やっぱりヒノエ君が降って来て。

将臣君ってば、本気で嫌そうな顔してる。



「…ほら…な?」

「うん…」



譲君なんてもう、私達の存在を忘れちゃってるみたいに

ヒノエ君しか見てないよ。

怒ってるみたいに見えるけど、なんだか楽しそうだし。



「お前、あんな所にいて、落ちたらどうすんだよ?」

「落ちたらあんたが介抱してくれるだろ?」

「お前…本当に馬鹿だな」

「ん、ゆずる馬鹿」

「好きにしろよ…」

「ん、愛してる」

「ばーか」



「なぁ…先に帰るか?」

「でも…悪いよ…」



先に帰るって…。

将臣君、本気で飽きてきてる。

まぁ、あの2人を見てたらお腹一杯になるしね。



「やあ、神子姫達もお揃いだね。今日はどこかに行ってたのかい?」

「やぁっと気づいたかぁ…。おっせえ」

「ふふ。仕方ないよね!でも、譲君も私達のこと忘れてたでしょ?」

「先輩…すみません…」

「おいおい、あんま譲を苛めんなよ?」

「将臣君ずるい!今更、味方ぶってる!!」

譲君にはちょっと意地悪しちゃったけど。

これくらいは良いよね?

ずっと弟みたいに思ってたのに。

急に大人になっちゃうんだもん…。



「ねっ!帰ろっか!」

「……だな」



譲君とヒノエ君の間に入って、2人の腕を掴んで。

将臣君は私の後ろ。

見守るみたいについて来てくれてる。



ねえ、もう私が一番じゃなくていいけど…。

もう少しだけ皆でいようね。

それから、私を見つけるレーダーは

いつまでも残しておいてね?

じゃないと……。



悪戯、成功させちゃうよ?


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