BL小説

□遺された者
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『遺された者』

なあ、小十郎。
お前は今、何してる?
あの世から、俺を見ていてくれているか?

お前が居なく為って、沢山の月日が流れて行った。
だが、お前を失った哀しみは、一行に癒えてはくれない。
お前が居ない世界は、俺が想像していた以上に淋しくて、苦しくて、そして暗い。

昔、俺はお前に言ったよな?
“お前は俺の右目だから、何が有っても死ぬな”ってよ。
お前、“承知”って言ったよな?
なのに、何でだよ?
何でお前は、死んじまったんだ?

あの時の事は、良く覚えてる。
俺が真田と一騎打ちをするために、お前はあの猿と戦ってたんだ。
いつも通りに別れて、それぞれの戦場に向かった。
まさかあれが最期に為るとは、あの時の俺は思ってもみなかった。

俺が勝って、真田が死んで、お前の所に戻ったら、お前が死んでて。
その場に居た猿に、俺は怒りに任せて斬り付けた。
猿は俺の刀で深手を負い、何処かに逃げて行った。
けど、そんな事はどうでも良かった。
お前が、死んだ−−。

お前の名前を呼んでも、お前の身体を揺すっても、お前からの返事は無かった。

その代わりに、どんどん冷たく為っていくお前の身体。
俺には、泣き叫ぶ事しか出来なかった。

あの時、お前と共に死ねたなら、どれだけ良かっただろう。
でも、それは叶わない。

もし俺がお前の後を追っていたら、お前は俺を素直に迎えてくれたか?
それとも、小言からか?
お前の事だから、やっぱ後者か。

でもよ、小十郎。
もし俺がお前の所に逝く時がきたら、そん時は素直に迎えてくれよな。
俺、頑張るから。
淋しくても、苦しくても、何が有っても頑張って、お前に胸はって威張れるように、頑張るから。
だから、その時まで待っててくれないか?
未だ、俺はお前の所には逝けないから。
待っててくれ、俺がそっちに逝ける様に為るまで。
そっちで、茶でも啜って待っててくれよな。


〜END〜

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