BL小説

□哀しき闇
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『哀しき闇』

「旦那……ッ」

眼の前に横たわる、真っ赤な血に染められた旦那の身体

行っちまったのか…?
この俺をおいて……?

そっと、旦那の身体に触れてみる

壊れてしまわないように、静かに

「…冷たい」

あぁ、ホントに行っちまったんだな…
夢じゃ、ないんだな

なあ、旦那…

「旦那は、覚えてる?」

あの時、旦那が俺に言ったこと…


「さすけ!」

「ん?どうしたの、旦那?」

「さっきはどこに行っておったのだ、さすけ?」

「え?あぁ、ちょっと任務にね。…もしかして、心配してくれてたの??」

「…ッ// べ、別に心配していたわけでは……」

−−クスッ

「…??さすけ?」

「ありがとう、旦那」

「…礼には及ばん///」

−−……

「なぁ、さすけ?」

「何?」

「お前はずっと、おれの傍にいろ!!」

「…は?忍の俺にそんな事言うの、旦那?」

「お前が居ないとヒマなのだ。それに−」

「…??」

「おれはお前を…、お前を失いたくない」

「…旦那」

「よいな!!」

「承知…!!」


まったく…、命令した張本人が先に居なくなっちゃってどうすんだよ、って話だよね……

まあ、あの時の旦那は、まだ小さかったから、覚えてないかもね…?

でも、俺にとっては、凄く嬉しくて、忘れられない言葉なんだぜ? 

あんなこと言うの、旦那くらいだしさ…

…あ〜あ、こんな事になるんならちゃんと言っとくんだったな〜

独眼竜との戦いに行く前の旦那に…


「では、佐助!行ってくる!!」

「あっ、ちょっと待って、旦那−」

「??どうした、佐助?」

「あ…うぅん、何でもない。…行ってらっしゃい、旦那!!竜の旦那なんかに負けんなよ!!」

「うむ、任せておけ!!」


言いそこねちゃったな…
大切な事…

相手にはホントの気持ち言わせといて、自分だけ言わないなんて…セコい部下……

でも、ま…、俺もそろそろ限界っぽそうだし
旦那のトコロいってからでも良いかな?

ねえ、旦那…?

『死なないでね?』

「俺も…旦那を失いたく…ない……」

何時までも…、旦那の傍に…居たいから……

〜END〜

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