BL小説
□哀しき闇
1ページ/1ページ
『哀しき闇』
「旦那……ッ」
眼の前に横たわる、真っ赤な血に染められた旦那の身体
行っちまったのか…?
この俺をおいて……?
そっと、旦那の身体に触れてみる
壊れてしまわないように、静かに
「…冷たい」
あぁ、ホントに行っちまったんだな…
夢じゃ、ないんだな
なあ、旦那…
「旦那は、覚えてる?」
あの時、旦那が俺に言ったこと…
「さすけ!」
「ん?どうしたの、旦那?」
「さっきはどこに行っておったのだ、さすけ?」
「え?あぁ、ちょっと任務にね。…もしかして、心配してくれてたの??」
「…ッ// べ、別に心配していたわけでは……」
−−クスッ
「…??さすけ?」
「ありがとう、旦那」
「…礼には及ばん///」
−−……
「なぁ、さすけ?」
「何?」
「お前はずっと、おれの傍にいろ!!」
「…は?忍の俺にそんな事言うの、旦那?」
「お前が居ないとヒマなのだ。それに−」
「…??」
「おれはお前を…、お前を失いたくない」
「…旦那」
「よいな!!」
「承知…!!」
まったく…、命令した張本人が先に居なくなっちゃってどうすんだよ、って話だよね……
まあ、あの時の旦那は、まだ小さかったから、覚えてないかもね…?
でも、俺にとっては、凄く嬉しくて、忘れられない言葉なんだぜ?
あんなこと言うの、旦那くらいだしさ…
…あ〜あ、こんな事になるんならちゃんと言っとくんだったな〜
独眼竜との戦いに行く前の旦那に…
「では、佐助!行ってくる!!」
「あっ、ちょっと待って、旦那−」
「??どうした、佐助?」
「あ…うぅん、何でもない。…行ってらっしゃい、旦那!!竜の旦那なんかに負けんなよ!!」
「うむ、任せておけ!!」
言いそこねちゃったな…
大切な事…
相手にはホントの気持ち言わせといて、自分だけ言わないなんて…セコい部下……
でも、ま…、俺もそろそろ限界っぽそうだし
旦那のトコロいってからでも良いかな?
ねえ、旦那…?
『死なないでね?』
「俺も…旦那を失いたく…ない……」
何時までも…、旦那の傍に…居たいから……
〜END〜