青エク
□H続 秘密
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私の言葉に彼女の形のいい唇がゆっくりと動いていく…
私は息をするのも忘れながらそれを見つめていた
「…私…結婚するんです…」
その言葉の意味をすぐに私は理解する事が出来なかった。
彼女はそんな結婚などする年ではないですし…何より今までの彼女は実際の年よりも幼い笑顔を見せていて…私の中で彼女は大人というわけではなかった…
それなのに…
彼女は私をからかっているのでしょうか…
思わず現実を受け入れる事の出来なかった私でしたが…そんな私の心を見透かしたのか…
小さく彼女は微笑むとクローゼットをゆっくりと開けた。
それはきっと開けてはならない禁断の扉…
中には美しい純白のウエディングドレスがあった。
その幸せの象徴の前で悲しげに笑う彼女…
それは私が知らない貴女の姿でした。
いつの間にか少女は大人の階段をのぼっていて…
私の手が届かないくらい違う世界にいた。
いつも明るく優しい彼女の何を私は見ていたんでしょうか…
本当の彼女はこんなにも
儚げで
美しく
誰よりも悲しげに笑っている。
目の前が霞んでいきそうになった。
彼女はもうそれを運命と受け入れているのか…涙は見せることがなかった。
いまどんな言葉を彼女に囁けば彼女をこの運命から救えるのだろう…
どうしたら本当の彼女の心に触れる事が出来るのだろう…
目の前で笑う
いつもとは違う表情を見せる彼女に戸惑いながらも…
恋情は変わらずにそこにあった。
このままじゃ本当に悲劇のロミオとジュリエットになってしまう…
塔の上にいる
遠い遠い
ジュリエットにどうしたら心から笑ってもらえるのか…私はそんな事を考えながら…
窓越しだという事も忘れて彼女に手をのばした。
今はなにも掴めはしなかったが…いつか…
二人の悲劇ではない結末を掴むためにこの手があると…
信じていた。
20120505