青エク

□@続 まだこの気持ちに名前はない
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その幼い少女を引き取ったのは私としては誤算だった。



人間の…ましてやまだ幼い子供など興味もなかったはずだったのに…。



たまたま藤本神父に連れられ立ち寄った孤児院で私はその子供に出逢ってしまった。



その大きな瞳を不安げに揺らしながら…ただ私だけを見つめるその少女。



その瞳を見た瞬間に無性に悲しくなった。



いつも冷静に情に流される事なく何かを壊し傷付けるだけの日々



それに不満などなかったし満ち足りた日常だった。



所詮私は悪魔だ。



そう自分に言い聞かせていた。



なのに…



「困りましたね…」



その少女を見た瞬間に
心の底から何かを守りたいと…思った。



壊すだけでなく何かを育てたいと…



あるわけがないと思っていた親心のようなものが私に芽生えてきた。



それは奥村兄弟を引き取りなんとなく以前より幸せそうに笑う藤本を見ていたせいかもしれないが…



気がつけば私はすでに手を差し出していた。



私の家で暮らしませんか?



なんて愚かな提案なんでしょう。



私ほどの悪魔が…



こんな人間の人生を左右するなど…。



それでも伸ばされてた手は小さく…



初めて私は何かを愛しいと感じた。




「私の名前はメフィスト・フェレスです。貴女のお名前はなんですか?」




その日私は



人間の少女の親になった。


そしてその出逢いが…




私の



人生を大きく左右するものだと言うことを




私はまだ知らない。






20120109
 

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