青エク
□K続 二人の彼
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「…彼女に薬を持って来てくださったんですね」
「…はい」
奥村先生はゆっくりと薬とお粥を置いて頭を下げて出ていこうとした。
「奥村先生の方が専門ですから…ここはまかせますね」
そんな奥村先生を尻目に私は彼女の部屋を後にしようとした。
「…余裕ですね」
奥村先生の言葉が後ろから聞こえて私は思わず…
小さく微笑んだ。
「さぁ♪ただ貴方は彼女の悲しむ事はしない事はわかってますので…」
奥村先生は強敵です。
私にはない寄り添う優しさ
彼女と合う人生の歩幅
強敵です。
きっと私が彼女の気持ちに気がつかずに通りすぎていたら…
今彼女の隣にいたのは貴方だったかもしれません。
嫌な想像です。
考えたくもない…。
しかし…
そんな結末だってあったに違いない。
「彼女を諦めるつもりはありません」
自制心が強い奥村雪男のそれは…宣誓布告でした。
「…いいでしょう。貴方が私から彼女を奪いたいと思うなら…私は常に貴方の思考の先を行きます」
頭脳戦に勝つのは私です。
やっと見つけた彼女のすべとは私のものだ。
「足掻いて下さい。若者らしく」
どんな事があっても彼女は渡しません。
背中に奥村先生の視線を感じながら私は彼女の部屋を後にした。
不安などなかった。
今の彼女を誰より幸せに出来るのは私です。
それだけは確かにわかる真実で…
私は愉快で危険なゲームのスタートをこの手で
開始した。
20111211