ひまわり


□♯8 空腹と依頼
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すると突然、お妙さんが何かを思い出したように言った。


「そうだ。日和ちゃんと神楽ちゃん、良かったらこの後私のお店に来てくれないかしら?」

「お妙さんのお店…ですか?」

「ええ、私キャバクラで働いてるんだけど、今店の女の子達がほとんど風邪でお休みしちゃって、人手が足りなくて困っている所なのよ。だから二人にお店の手伝いをしてもらいたいんだけど、頼めるかしら?」

「いやあのキャバクラって……一応、私たちまだ未成年ですから」

「大丈夫、年は誤魔化せばいいわ。それに日和ちゃんたちに働いてもらうのは裏方だから、直接お酒を扱ったりお客様の前に出て仕事したりする事はないから安心していいわよ」

「そうは言っても…」

「もちろん、ちゃんとお給料も出すわ。それもタダ飯付きで」

「やらせていただきます」(即答)


よく考えなてみなくてもこれって仕事の依頼じゃん。お金入るじゃん。
そうだよ!やっと少しはまともな生活に戻れるかもしれないじゃん!
おまけにタダ飯食えるじゃん!ラッキーじゃん!

万事屋が仕事選んでられないよね!


「神楽ちゃんもいいよね?」

「……仕方ないアルナ。日和がやるなら私もやるネ」


私がキラキラの笑顔で聞くと、神楽ちゃんは溜め息混じりに言った。
その様子を見たお妙さんが微笑む。


「決まりね。ホント助かるわぁ。ありがとう!じゃあ今夜お店で待ってるわね」

「はい。あ、それから、きっと人手はたくさんあった方が良いと思うので銀さんと新八君も連れて行きますね」

「ふふ、そうしてくれると嬉しいわ」


こうして(勝手に)仕事を引き受けた私と神楽ちゃんは、綺麗な笑顔を残し去って行ったお妙さんの背中を見送った後、定春と万事屋に足を向けた。



―――――――
――――
――



「という事で、今夜仕事入ったからよろしくね」


帰宅すると、ソファーに腰掛け今朝と全く同じ体勢の銀さんと掃除に勤しむ新八君に事情を説明した。
すると何故か話を聞いた二人は困った様に顔を見合わせた。


「え?何?何か問題でもあった?」

「…ついさっき、日和さん達が出かけている間こっちでも依頼があったんですよ」

「おお、やったじゃん」

「そうなんですけど、それが…その依頼、今夜なんです」

「…え?」


まじでか。
まさかのかぶった感じですか。


「お妙には悪いが、俺と新八はそっちに行く。お前と神楽で店の方何とかしてやってくれ」


申し訳なさそうにする銀さんに私は分かった、と頷いた。


「…なんか、私の初めての依頼が四人一緒じゃないのはちょっと残念だな…」


思わずそう呟いて、ハッと我に返った私は自分の吐いた言葉に恥ずかしくなった。


「あ、いや…、いっ今のは冗談だから!忘れていいよ!てか忘れて今すぐ!」

「なーに照れてんだよ、オメーは。別に照れるこたァねーだろ。つーか、お前がそんな風に思ってたなんて、何かこっちが照れんだけど」

「…ですね。そう言われて悪い気はしないし、何より日和さんに好かれてるみたいで嬉しいですよ、僕ら」

「そーそー。日和は俺のこと大好きだからね。そう思っちまうのも仕方ねーよ。自然現象だ」

「ちょっと、そういう事口に出して言わないでよ。余計恥ずかしいじゃん」

「あれ、否定しないの?え、嘘、ついに銀さんの想い届いた!?」

「あ、ちなみに言っとくけど、別に銀さんの事大好きだからとかないから。私が大好きなのは神楽ちゃんと定春と三丁目の角にあるケーキ屋のシュークリームだけだから。そこ勘違いしないでよね白髪」

「日和ィー!私も大好きアル!」

「わん!」


神楽ちゃんが私に飛びついて抱き締めてきた。定春も私を見上げて尻尾を振っている。

ほんと何でこの娘はこんなに可愛いの。何で定春はそんなに白くてモフモフしているの。

あれ、何か身体がミシミシいってんだけど。何でだろ。
ていうか苦しい。
ちょ、内臓的なものが出そう!

神楽ちゃんんんん!!??
抱き締める力強すぎだよォオ!!
死んじゃうゥウ!!!!!


「……何でいつも俺の扱いひどいの。ねぇ。もう泣いていいかな?いいよね?泣くぞ、コノヤロー」


「僕のことは?」


 
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