ひまわり
□♯7 あやしげな影
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それから記者会見のような一問一答が長らく続き、いい加減そのやり取りに飽きてきた頃。
頻りに高杉晋助や攘夷志士との関わりなどについて質問されていたが、明確な情報が得られないと分かったのか、土方さんが煙草の煙を吐き出しながら言った。
「すまなかった、日和。無理やり連れて来ちまって。何も知らねーならそれで良いんだ」
「…そう、ですか。何か、お役に立てなかったようで…」
「気にしないでくれ日和ちゃん。ご協力感謝するよ」
そう言って軽く頭を下げた近藤さん。刹那、何か閃いたようにガバッと顔を上げた。
「そうだ!お詫びと言っちゃなんだが、晩飯でも食べていかないか?このまま日和ちゃんを帰すのも名残惜しい気がするしな!勿論、日和ちゃんがよければだが」
「えと、私は…」
どうしよう。
気持ちは有り難いけど、帰って万事屋の夕飯の仕度しなきゃいけないしなぁ…
「なっ、トシと総悟もいいだろ?」
オイ。私まだ“良い”なんて言ってないのに何で話進めてんだゴリラ。
「俺ァ別にいいですぜィ」
「…俺も別に構わねぇが。それにアイツにゃまだ説教も終わってねーからな」
「ゲッ、覚えてたんですか」
「ったりめーだ馬鹿。ナメた真似しやがって、ただで帰すわけねーだろが」
「ですよねー…」
意見が一致したという事で、この後土方さんのお説教が待ち受けているは御免だったが、私はお言葉に甘えて、というか半強制的なんだけど夕飯を頂くこととなりました。
ごめん、みんな。
断りきれませんでした。
そしてサヨウナラ。
本日わたくしは土方という鬼に食われます。
「じゃあ日和ちゃん、食事の時間までまだ時間があるからここでゆっくりしているといい」
そう言う近藤さんと土方さんは腰を上げた。
「…行っちゃうんですか?」
「ああ、悪いが俺とトシは仕事が残っていてなァ、あまりゆっくりしているわけにゃいかねーんだ」
ぬぅ。やっぱり局長と副長様は忙しいみたいだ。
色々話したい事あったけどまた夕飯の時にしよう。ならば、
「総悟は?」
「俺ァ暇です」
「オメーも暇じゃねーんだよ!今日テメーがまた店破壊したせいで始末書がたまってんだ!今すぐ書け!!」
「え〜めんどくせェ」
「めんどくせェじゃねェ!」
「まぁまぁ、トシ。このまま日和ちゃんを一人で残すのもアレだから、総悟にゃ晩飯まで一緒にいてもらう事にしないか?始末書は後ででも良いだろう」
「だが近藤さん…!」
「それがいいですよ。こんな所に日和を放置するなんてあんまりでさァ。日和は俺がちゃんと面倒みときますから安心して下せェ。始末書は後で必ず書きます、土方が」
「何で俺!!??」
「部下の尻拭いも上司の仕事でさァ」
「ふざけんな!!いつも誰がオメーの後始末してると思ってんだ!!いい加減てめーの尻(ケツ)くらいてめーで拭けや!!」
「トシ、総悟。喧嘩はやめねーか」
「そうですよ。私のことは大丈夫だからさ、総悟も仕事があるんでしょう?行っていいよ。つーか行け」
「いや、俺ァ一旦やると決めたことは最後までやり通す男なんで、飯の時間まで日和と一緒にいるぜィ」
「テメーはただ始末書かきたくねーだけだろうが」
言いつつ土方さんは横目で総悟を睨みつけた後、呆れ顔で溜め息をついた。
そして『もういい、好きにしやがれ』と吐き捨てるように言いそそくさと行ってしまった。
「…あーあ、土方さん呆れちゃったじゃない」
「その方が好都合でさァ」
「ハッハッハ。トシはああは言っていても、日和ちゃんのこと心配してるからなァ」
近藤さんは豪快な笑い声を上げた後、再びニカッと白い歯を見せて笑った。
って事はアレか。
私のために総悟のこと見逃したという事か。
もしや土方さんはツンデレか?(いやデレてないけども)
「…そゆとこ、あんまり変わってないな…」
昔も、いつも何だかんだ言って土方さんは私と総悟には甘かったっけ。
まぁ近藤さんほどじゃないけどね。