ひまわり
□♯7 あやしげな影
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「日和ちゃァァァん!!会いたかったよォ!!元気してたァァ??」
「こ、近藤さん…く、苦しいです…離して下さいッ。元気ですけど今あなたによって元気じゃなくなりそうです!」
「そーかそーか、相変わらず照れ屋さんだなァ日和ちゃんは!」
「あのっ、だから苦しいですってば!ちょ、まじウザい臭い気持ち悪い!離れろ!」
「え!?臭い!?いま臭いって言った!?」
「やだ顔が近い!!いい加減にしないとぶっ殺すぞゴリラ!!!!」
「ゴリラだと!?まさかゴリラって俺のことか!?」
「……近藤さん、もう離してやってくれ。日和、相当嫌がってんぞ」
「嘘!!??」
土方さんのおかげで漸くゴリラの腕の中から抜け出す事が出来た私。
ほぼ無実の罪でパトカーに乗せられてから、真選組屯所に到着すると土方さんと総悟に連れられ私は広い座敷に通された。
そこでゴリラ…もとい近藤さんに会い、私を見るや否や両手を広げ涙を流しながら私に飛びついてきたのだ。
その分厚い胸板に顔面を押しつぶされ息苦しさで死ぬかと思ったけど、近藤さんの腕の中はあったかくて懐かしさが込み上げた。
何かいろんな意味で涙が出そうになっちまったよ。
本当…
みんな変わってないなぁ…
「日和、そこに座れ」
土方さんに促され、私は指定された位置へ座った。
そして近藤さんを中心に、土方さんと総悟も私の前に三人は腰を下ろした。
どうやらここは客間らしく、私はてっきり牢屋にでもぶち込まれてしまうのではないかと思っていたので何だか拍子抜けした。
手錠もされなかったし、やっぱり考えすぎだったかもしれない。
だって久々に会った友人に突然逮捕されたら私の心ズタズタのボロボロでもう立ち直れそうにないもの。
しかし、ただ連れてこられた訳ではないのは明白だ。
……何だろう。何か問い質されたりするのだろうか。
もしかして私は知らず知らずのうちに罪を犯して…!?
「そんな身構えなくていいぜ、日和」
険しい表情の私を見てか、総悟は言った。
「なーに、心配することはないいさ。別に日和ちゃんを逮捕したわけじゃないし、ましてや牢獄送りにするわけでもないからな」
穏やかに笑って言う近藤さんを見て、ほんの少し緊張が和らいだ。
何だ、逮捕されたわけじゃないのか。
くそっ、土方の野郎め。
俺の心を傷つけた何だと言って私を逮捕しやがって。
ぶっちゃけマジで焦ってたんだぞ!まだ私の人生これから何だから!
まぁとりあえず豚箱に放り込まれる事はないんだな、良かった良かった。
「…で、本題に入るが、その前に日和ちゃんには正直に答えてもらいたい」
「……はい」
心なしか近藤さんの眼差しが鋭いものに変わった。
うぅ…
なんかまた緊張してきた。
「では単刀直入に聞く、君は最近攘夷志士と接触したことはあるか?」
……攘夷志士…?
「いえ、身に覚えがありませんけど…」
「…そうか。なら、高杉晋助という男は知っているか?」
「あ、高杉さんと思われる方なら知ってます。この間、会いました」
「「「え」」」
けろりとした顔で返答したら三人は目を丸くして固まった。
瞬間、土方さんが声を上げた。
「接触してんじゃねーかッ!!」
「へ?高杉さんって攘夷志士なんですか?」
「あ?…お前、知らねーのか。高杉は過激派といわれる攘夷志士。立派な犯罪者だ」
「ふーん、そうなんですか、知りませんでした」
「ふーんってお前な…」
いやだってあんまり興味なかったし。
確かによく考えればすぐに分かった事かもしれないけども(帯刀してた事とか)。
まぁ、アレだ。そこまで考える余裕がなかったからな。うん。
「でも、その“思われる”って何でィ?正確じゃねーのか?」
怪訝な顔で呆れ返る土方さんを余所に今度は総悟が訊ねてきた。
「はい。恐らくその方が高杉さんだと後から聞いた話なので」
「それは誰にだ」
「…別に誰だっていいじゃないですか」
「誰だと質問してんだ。答えてもらうぞ」
誰だと聞いてくる土方さんの瞳は真剣だった。
ていうか、どうして私は質問責めにされているのか。一体みんなは私から何が聞きたいんだろう…?
ここは素直に質問に答えた方が良さそうだと考えたが、私は嘘をついた。
「知らないオジサンにですよ」
「…知らないオジサン?」
「そうです。何かよく分からないけど知らないオジサンです」
「いや、意味わかんねーんだけど…」
本当は、知らないオジサンではなく“銀さん”に聞いた話だ。
何故嘘をついたかというと、銀さんの名前を出すと色々面倒なことになりそうだったから。
まぁオジサンには変わりないから別にいいだろ。
え?良くない?
「……まぁいい。次の質問をさせてもらう」
うげげ。
まだ続くんですか。