chocola
□ドキドキしてもいい?
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あんなに暑かった夏が突然終わり、ここのところ、急に気温が下がったせいか、ナナは風邪をひいたらしい。
夜中に生姜湯を作ってのんだり、悲しいけど身体が弱ってきているのがよくわかる。
だけど今日は、週に一度の体育の課外授業の日。
ナナは、元気をもらいに行こうと幼稚園へ向かった。
体育館に入り、いつもの場所に座る。
ナナは、他のママグループの方には混ざらず、一人で参観するのが好きだ。
群れるのが苦手で、世間話も苦手。
自然と、本当に気の合う人だけとしか、一緒にいない空気を作っているんだと思う。
ふと、ナナの前を野口先生が通りかかり、目の前でズボンの裾をなおし始めた。
日焼けした筋肉質な腕や、大きな背中につい、目が行ってしまう。
そこへナナの息子が横を通りかかり、野口先生が彼に言った。
「はやとくんのママ、風邪なの?」
「えー?知らない」
「気をつけないとうつるぞー」
なんて、ふざけてあっている。
『え?私、咳とかしてたっけ?もしかして、ハナミズたれてるの?』
ナナは、体調不良に気がついてくれて嬉しい気持ちとは裏腹に、一人焦ってバタバタしまった。
ナナが野口先生を勝手に意識している事は、誰にも言っていない。
いい年して、子供の幼稚園の先生に恋してるなんて、口が裂けても言えない。
旦那に不満はあるけれど、家庭を壊す勇気はなくて、野口先生を目で追うだけの恋心。
まるで、中学生みたいで笑えちゃうけれど、ナナはそれで一週間十分幸せに暮らして行ける。
それ以上は、望んでいなかった。