小説

□シェービングクリームはそんな事に使う物ではありません。
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時は戦国。


誰しも生きるか死ぬかの狭間に集う時代だ。




幼い子供は忍者に憧れ、それを学ぶ為に修行する。




忍者のたまご達が集まる学園では本日も平和な1日が過ぎ様としていた。






「不破先輩!」




忍術学園で五年生になる不破雷蔵に声を掛けて来たのは、同じ図書委員会に所属する一年生の少年であった。




「どうしたんだい?きり丸」




雷蔵は前屈みになり息をきらす
自分より小柄な少年に話掛けた。




彼の名は「摂津のきり丸」

一年は組に所属し雷蔵と同じ図書委員であり、どケチで有名である。





「どうしたじゃないですよ〜!鉢屋先輩が……」





「……鉢屋がどうしたんだ!」




雷蔵はきり丸の小さな肩を掴み前後に揺すった。



「…図書委員の手伝いをしてて誤って台から落ちてしまったんですよ。」



その言葉を聞いた瞬間、全身が凍り付いた感覚に襲われた。







「何だって!!それで無事なのか?」



雷蔵の切羽詰まった言葉にきり丸は落ち着く様に足しなめた。



「鉢屋先輩なら軽い捻挫で済みました。今は忍たま長屋で休んでると思いますよ。」



きり丸の言葉に安心し、雷蔵は相手が待つ忍たま長屋に足を早めた。




「鉢屋!!!」



思い切りドアを開け、相手がいる事を確認する。



「どうしたんだい?そんな怖い顔をして……」




その相手は読んでいた本から目を離し、ゆっくりと雷蔵の方へ目を向けた。




その相手とは、クラスメイトで同室である雷蔵の変装を常日頃からしている、変装の名人であり、雷蔵の恋人である。




「……図書室で怪我をしたって聞いた。」


「その怪我……そうだろ?」



三郎の左手と足首には包帯が巻かれていた。


右頬にはかすり傷まで見られた。




雷蔵はゆっくりと三郎の頬に手を伸ばした。





「…大した事はないよ。軽い捻挫だ。但し善法寺伊作先輩には余り使わない様に言われたけど。」



そう言って口角を上げ微笑んだ。




「また、僕に間違えられたのか?」



「きり丸にね。手伝うのは良かったけど、中在家先輩に気付かれて自滅。」




三郎は少し目を伏せながら雷蔵の手を取った。





「……僕のせいで。ごめん」




雷蔵の目には一杯の涙が溜まっていた。



三郎の怪我を知らなかった悔しさと罪悪感が雷蔵を襲う。




「……何で君が泣くの?」



そう言って三郎は子供の様に泣きじゃくる雷蔵を自分の方へ引き寄せた。




「………うっ」


「……ごめん」



その言葉に更に三郎の腕に力が隠る。





「…泣き止んでくれよ。私は君を泣かす為に図書委員会の仕事を手伝ったんじんじゃない」





「……三郎」


雷蔵が顔を上げると柔らかい笑みを浮かべた三郎の顔があった。



そのまま、三郎が雷蔵へと唇を寄せる。



触れるだけの軽い口付けを交わした。



「……僕には責任がある。何かして欲しい事はないかい?」



雷蔵の言葉に一歩置いたが、三郎は暫く考えて口を開いた。




「……じゃあ、君が私の腕になってくれ。」



三郎の言葉にきょとんと目を丸くし固まる雷蔵の髪に手を向け続けた。




「利き手を捻ってしまってね。これではノートも写せない。」




だから、日常生活を手伝って欲しいと三郎は告げた。




「そんな事か。御安いご用意さ」




この時は、まだ雷蔵は気付いていなかった。


三郎が何で「日常生活」をと言ったのかを。






そして、数日が過ぎ五年ろ組では一つの課題が向けられていた。





「………」



「どうしたんだい?また悩んでいるのか?」


自分の机に向かい頭を抱えている雷蔵に声を掛けた。




「三郎。変装ってさコツとかあるの?」


雷蔵の問いかけに小さく笑みを浮かべ雷蔵の隣に腰を下ろした。





「なぜ、私に聞くの?」




「だって君は学園一の変装の名人ではないか。しかも、今回の課題は女装だよ!?女装は苦手でね」





そう言って雷蔵は恥ずかしそうにふふっと苦笑いを見せた。




「女装なら山田先生に聞いた方が良いんじゃないか?」




にっと子供の様な笑みを浮かべ雷蔵の背中を叩いた。




「真面目に答えてくれよ。」





「真面目だとも。……もう遅い。部屋に行こう」



そう言って、雷蔵に手を差しのべた。




未だ三郎の腕には包帯が巻かれていた。





「………まだ痛むかい?」




包帯が巻かれている腕を軽く摩る。



「……気にする事はないよ。……それより早く二人きりにならないかい?」




雷蔵の耳元で軽く囁く。



こうして二人は自室へと足を向けた。
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