dream〜other〜

□ヒドイ男
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――とある港に停泊中のシリウス号。


少し緯度の高いこの街は、初秋とはいえひんやり肌寒くて。

そして夜にもなれば一段と寒さが増す。





こんな夜に

あなたは傍にいてくれない・・・。






**********



「うおっ、さっみぃ!今夜は冷えるなあ。」

船長室へ戻ってくるなり、言葉通りの冷えた空気を連れてきたリュウガ船長。

私はいつもの場所、赤い揺り椅子で読書をしながらその様子を見ていた。

「おかえりなさい。」

その一言だけを呟いて、また私は膝に乗せた本へと視線を落とす。

『早かったですね』と付け加えなかったのは、なんだか遠まわしに嫌味を言ってるみたいだったから。


それに・・・、


あなたを見ていたくなかったの。


『寒い』なんて嘘でしょう?


船長が連れてきたのは、冷たい空気だけじゃなくて・・・。

強いお酒の匂いと、

それ以上に香る女物の香水。


“そういうトコロ”に行ってたんだって、いくら鈍い私でもわかるよ。


アルコールと人肌に温められて、寒いはずなんてない。

・・・ああ、そうか。

“だから”、余計寒く感じられるのか。


私は胸元を緩めてベッドに倒れこんだリュウガ船長を見る。

チラリと、盗み見るように。

あなたは私の気も知らないで、大きなあくびをして大の字になって・・・。


『行かないで、私以外の女性(ひと)に触れないで』――なんて。

言えたら、どんなにラク。




言えないのは・・・――。




「あー・・・さみぃ。おら、○○、こっち来ておめぇも横になれ。」

「・・・もう!また人のこと湯たんぽ代わりにするんですか?」

「だってよぉ、おめぇ体温たけーから温いんだわ。」

これからの季節はおめぇに限るわ、なんて、まるで子ども扱い。


ヒドイ男にも程があるけど・・・。

「はぁーい、わかりました!」

それを拒めない情けない私も・・・、確かに存在する。


少しおどけて明るく振る舞って・・・。


ベッドに上がった私をリュウガ船長はその懐に迎え入れ・・・、

チクチクする胸の痛みを気づかないフリで、私はあなたに擦り寄る。



湯たんぽでも抱き枕でもいいの。

あなたの傍にいさせて・・・。



刹那的な束の間の幸せに浸りながら、私はあなたの胸で眠りに墜ちる――・・・・・・。






〜終わり〜

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