dream〜シン〜

□最愛の君へ贈る(中編)〜シンVer.〜
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◇◇◇◇◇

陽が暮れて寒さが増した歓楽街。

俺は雑踏を掻き分けながら○○を探して奔走する。


くそっ!あいつ、一体どこへ?


「シン、見つかった?」

手分けして探していたナナと合流したが、あちらも情報は得られなかったようだ。

俺はこっちを、ナナはあっちを、というふうに、また別行動で街を走り回る。

季節はもう冬だというのに、街中を駆けずり回っている俺の額にはうっすらと汗が滲んでいた。

街は煌びやかなネオンに彩られ、娯楽を求め集まった人々がひしめきあっている。

そしてそこに建ち並ぶ店は、なにも合法的なものばかりではない。


もしかしたら、あいつはもう・・・。

いや、そんなことがあってはならない。

あいつは俺のものだ、何人たりとも手出しは許さない。


最悪の事態が脳裏をよぎっては、打ち消す。

俺は苦々しい思いを噛みしめた、そのときだった。

「おい、聞いたか?」

「ああ、あのスラム街で絡まれてた女の子だろ?可哀想になあ・・・。」

街行く男達の、そんな会話が聞えてきて、俺は何かを感じ取り、それに耳を傾けた。

「この島じゃ珍しい娘だったなあ、東の国の女の子だろう?」

「噂によると、娼館に売られちまったっていうじゃねえか。気の毒になあ…。」

その男達の会話に、俺はいてもたってもいられなくなった。

つかつかとそいつらの傍に歩み寄ると、その中の一人の肩を掴んで振り向かせ、胸ぐらを締め上げた。

「貴様、その話は本当なのか?」

「ひっ。な、なんだよ、アンタ!」

「今の女の話だ。本当なのかと聞いている。」

答えろ、と低く唸ると、青ざめた男が「本当だ」と答えた。

ただ、情報はそれだけで、どこの店に連れて行かれたかまでは知らないと言う。

俺は掴んでいた男の胸ぐらを放すと、いかがわしい店が建ち並ぶという区画に足を踏み入れる。

すると間もなくして、

「ねぇ、おにいさん、寄ってかない?」

「にいちゃん、いい娘揃ってますよ!いかがです?」

玄人女や娼館の客引き達が、矢継ぎ早に声を掛けてきたが・・・。


チッ、この店でもないか・・・。


入った館はことごとくハズレて、俺は募る焦りと苛立ちから立ち止まり舌打ちをする。



と、そのとき。

「そこの眼帯の旦那!うちの店で遊んで行きませんかい?」

俺はひとりの客引き男に声をかけられた。

多々ある娼館の中でひとつだけ、異国情緒溢れる趣の館。

それはヤマトの娼館『遊郭』を模した造りで、まだ調べていない店だったと思い出す。


ヤマトの造りの建物にヤマトの女を置いたら、これ以上ぴったりな事はないじゃないか。

もしかしたら、あいつはここに?


そう閃いた俺の勘は当たった。



朱塗りの格子の中、俺は一人の女に眼を奪われた。

否、女というよりは、まだ少女の風貌だ。

その幼な顔の女は、まるで道行く人々に顔を見られるのを拒むかのように、俯いたまま動かない。

大胆かつ鮮やかな衣装を着せられ、髪を結い上げ、白粉をはたかれ紅を差してはいるが、俺が見間違うはずがない。


○○だ・・・。


俺はそこでひとまずのため息をつくと、

「おい、男。…あの女は?」

と、客引き男に問うた。

すると男は大袈裟な身振り手振りで、「旦那、お目が高い!!」といやらしく揉み手で媚びへつらってきた。

そして、

「あの娘は『白雪』って言いましてね、丁度今日入ったばかりなんですよ。どうです?かなりの上玉でしょう!?しかも、ここらじゃ珍しいヤマトの女ですぜ!」

さも、我が物のように言うのに反吐が出そうな気分になる。


ふん、なにが『白雪』だ、色が白いからか?

まんまじゃねーか、もっと捻りのある源氏名つけろよ、この脳なしが。


俺は心で口汚く罵るが、表面的にはさも興味ありげに一芝居をうつ。

「ほう…?」

すると廓の客引き男は、俺があいつに興味をもったと勘違いし、商品である女の情報をべらべらと喋りだす。

「小柄で顔立ちに幼さは残りますが、身体つきは悪くありません。…ただ、あぁ、まあ…生娘でして……、敬遠する旦那もいなさるんです…。いや〜でも、なんといっても肌が絶品なんですよ!色白のキメ細かいモチ肌してましてねぇ…、あれはヤマト特有のもんですぜ!」

などと抜かしやがるこの男の息の根を今にでも止めてやりたい衝動に駆られながら、それを必死で押し止める。


顔は幼いが身体つきはいいだ?

色白の肌が絶品だ?

知った風な口聞くんじゃねーよ。


ああでも、こいつは良い情報をくれたな。

こいつは○○を生娘だと言った。

なら、まだあいつの純潔は汚されていないということだ。


ひとまず最悪の事態は免れたようだ、と安堵した俺の背後から、不愉快な会話が聞こえてきた。

「おい、あの一番端にいる娘、可愛いじゃねーか。」

「しかもヤマトの女だぜ!へへっ、俺、指名しちゃおっかな?」


ふざけるな、あいつはお前らのような下衆が手折っていい花ではない。

それがとてつもなく忌々しくて、俺は眉を顰めていう。

「…男、あの女を頼む。」

と、『白雪』という名の○○を指名すると、「へい、ありがとうございやす!」と威勢良く言って、客引き男は俺を建物の中に招き入れた。


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