dream〜シン〜
□意地と自覚
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「おはえは大したヤツだな、○○。」
「シンさん・・・。」
真摯な眼差しで見下ろす俺を、熱っぽく潤んだ瞳で見上げてくる○○。
けれど、
「『馬鹿は風邪引かない』という通説を見事に覆すとは、ホント、大したヤツだ。」
という俺の発言に、○○は潤んだ眼のまま情けなく眉をハの字にさげた。
「シ〜ン〜さぁ〜ん・・・。」
「情けない声を上げるな、冗談だ。」
まったくもって力のこもってない恨み節を、くっくっ・・・と笑って受け止めていると、
「こーら、シン。病人をいじめないの!」
○○の熱を計っていたドクターが、体温計の水銀を確認しながらも俺を窘めてきた。
「いじめてませんよ。」
からかって楽しんでるだけです・・・なんて言ったら、またドクターに怒られそうなのでやめておくとしよう。
案の定、ドクターは疑いの眼差しを俺に向けている。
そして今度は一転して心配げに○○に向き直って発した言葉は――。
「○○ちゃん、ほんとに大丈夫?今晩は医務室で眠ったほうがいいんじゃない?」
・・・だった。
どうやら俺が一晩かけて風邪っぴきのこいつをイジメ倒すと危惧しているらしい。
この人には俺が鬼に映っているんだろう。
まったく、失礼な人だ。
「ふふ、大丈夫ですよ。」
そんなドクターに額に氷嚢を乗せられた○○が笑って否定するのを、俺は当然だと鼻で嗤う。
けれど。
「ん〜、でも。シンに風邪が移っちゃうと大変だし・・・」
「ああ!ほんとだ・・・そうですよね。シンさんに倒れられたらシリウス号が動かせませんよね・・・。」
俺から言わせればドクターの余計な一言に納得し、あからさまにシュンとなる○○。
こら、まんまとドクターの口車に乗せられるんじゃねぇよ。
わかれ、それくらい・・・って言っても、こいつには無理か。
というか、ドクターこそからかって楽しんでるじゃないですか・・・と内心で毒づいてる俺をよそに、『私やっぱり医務室に移ります』と言い出しかねない○○の先回りをして、
「こいつの看病は俺がしますので。○○もそれを望んでます。」
と勝手にこいつの返事を代弁する。
ですからお気遣いなく・・・と眼ヂカラでドクターを牽制するのも忘れない。
けれどドクターは「ちょっとからかいすぎちゃったかな?」と、クスクスと俺を見て笑った。
「あはは、わかってるよ。私だってたまには冗談を言うんだよ?」
どうやらからかわれたのは俺の方だったようだ。
まんまと嵌められて独占欲を剥き出しにしてしまった自分が口惜しい。
いや、ドクターは何か勘違いをしている。
俺はこんなチンチクリンのことなんか、なんとも思っちゃいない。
だが、こいつは俺の所有物だから手放したくないだけだ。
そんな俺の、別のところにある本心を見透かしたようにドクターは微笑むと、
「じゃあ○○ちゃん、私はこれで戻るからね。」
お大事に・・・、と一声かけて腰を上げた。