僕らの玩具
□始まり
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そんなことだからメイドやろっかなーなんて軽く考え始めた翌日、私がメイドになることはもう決定した。
「・・・・・・」
インターホンの音がして玄関にいけば恭弥君と恭弥君のお母さん。
恭弥君は何故か学ランで恭弥君のお母さんは着物姿。
どうしたのだろうと思いつつも私は2人を家にあげた。
「えーと、今日はどう言う御用で」
「いえ、そんなにかしこまらないでくださいな。恭弥からお聞きしたと思いますが、是非咲希ちゃんにメイドをやってほしいと!」
「はい。恭弥君から聞いたのですが・・・やはり高校に合格したわけですしそう簡単には」
「まぁ!まぁまぁ!!」
「へっ」
ずいっと鬼の形相をぎりぎりまで近づけてきた!怖い、怖いよ!!
私が顔を引きつらせているのも気にせず、キッと睨んでいるような鋭い目で私を見る。それは生まれつきの物で本人には睨んでいる気なんてないんだろうけど・・・
「どうして!何が不満です!」
「い、いえ・・・不満などではなく・・・」
「給料は望むのならいくらだって払いますわ。何かやりたいことがあるなら、雲雀家で全力でサポートします!必要とあらば家庭教師もつけますので」
「え、えぇ!?」
「下手な高校にいくよりもそのほうがいいですわ。他に何か?」
「い、いえ・・・気持ちの問題というか・・・」
「それはつまり恭弥のメイドがやりたくないと?恭弥が嫌いなのですか?そうならそうとはっきりいってくださってかまいませんわ」
「違います!恭弥君が嫌いなわけじゃないんです!ただ・・・必死に勉強してはいった高校に通わないのも・・・と思っただけで・・・」
嘘だ。必死にではなく、適度に勉強しかしていない。恭弥君はそれを知ってるからクスクス笑っている。
恭弥君のお母さんは納得したように頷きながら私から顔を離してくれた。一度心身を落ち着けてソファに綺麗に座りなおし紅茶を一口飲む。
「えぇ・・・確かにそうですわね。けれど、私はどうしても咲希さんに恭弥の世話役をやってほしいの」
「そのことなんですかが・・・。正直私は頭のいい方でもなければ美人でもなく器用かといわれれば器用でもなく不器用かと聞かれれば不器用でもなく。料理も洗濯もそこそこで・・・マナーなんかも全然分からなくて・・・」
「そんなこと気にする必要ないんですわ!えぇ、えぇ。恭弥に気に入られた時点で恭弥の世話役になる資格があるとお思いください。マナーなんて二の次、パーティーで恥をかこうが私どもは一向に気にしませんわ!」
私が気にする!ていうか、パーティー!?
そこまではまったく予想していなくて、私もパーティーに出るのかと思うとやっぱり不安になった。ドレスなんて絶対似合わない!
もちろん微かな期待だってあって、きっとお金には困らないし見たこともない料理に綺麗な服もあるとおもう。私はあんまり興味ないけど・・・
「・・・咲希さんにも都合があるのは重々承知ですわ。けれど、恭弥が人を気に入るなんて滅多にありませんからつい・・・」
お母さんは恭弥君に視線を移した。
そんな母親の視線どこ吹く風で、恭弥君は反対側を見ている。
「群れが嫌いといっては子供を傷つけ、大人も逆らえず・・・。正直、咲希さんのところにいつも遊びにいくのは心配でしたわ」
「心配・・・?」
「咲希さんが脅されていたり・・・もちろん、子供がそんなことするはずないとは思いますがそうだとはいいきれませんし。恭弥が、本当に咲希さんを好きだと聞いてとても安心したのです。あぁ、この子も人を好きになれるんだって」
「・・・・・・」
「ごめんなさいね。でも、貴女といることで恭弥が少しでも丸くなれるんならと思って」
「・・・咲希、やるよね」
「こら。どうして呼び捨てなの」
「どうせ僕のものになるんだからいいだろ。ねぇ、やるよね?」
答えは一つしかないように、薄く恭弥君は笑う。
ぶっちゃけ、その答えをいってしまうのは癪なのだけれど私にとっては良すぎる条件だ。
「・・・謹んでお受けいたします」
「っ・・・ありがとう」
「たくっ。無駄に長い時間かけないでくれる?じゃぁ、咲希。いくよ」
「え、どこに?」
疲れた、とソファから立ち上がり肩を回しながら恭弥君は私のところにきて手を引く。
そしてこともなげなく
「僕の家」
と言った。
いつもなら はい!? とか えぇ!?なんで!? とか叫んでしまうのだけど・・・なんだか長い話で抵抗する気が失せて
「そうね。家に住んでもらいましょう。ここは解約するけれど・・・いいわよね?」
もうなんでもいいです、と私は曖昧に笑った。
・・・こうやって流されていくんだろうなぁ。