ご主人様とメイド

□病
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「・・・ゲホッ、ゲホッ」

「まだ寝てて」

「――・・・(こくん」




気がつけば、そこはベッドの上。

ゆっくりと起き上がれば、とたんに咳が飛び出してきた。

近くに座り、仕事をしていた綱吉は慌てて私をベッドに押し戻す。




(私・・・)

「風邪の引き始めだって。裏庭で寝てたからだよ」

「寝て・・・・・っ!!」




一瞬にして、頭の中に何があったか思い出した。

体がブルリと震えてしまう。

綱吉様にそのことをいおうとしたが、声が出ない。

けど、いってしまえばまたお仕置きされるかもしれないと・・・言うのを止めた。

私は綱吉様の所有物だから。自分のものに手を出されて・・・怒らないはずがない。

そこまで油断していた私のことを。



(あれ?)



ふと、問に思った。

一度目を覚ましたとき、私は服を着ていない裸の状態だったはずだ。

それで見つかれば・・・諸事があったことぐらい分かるだろう。

それに、服も着替えさせられていたし・・・体も綺麗になっている。



「咲希は庭で寝ていた。それだけだよ」

(・・・・・)

「分かった?」




コクリと私はうなずいた。

どうやら、綱吉は怒っているようではないようだし・・・

風邪だからなのか、態度が優しい気もする。

いつもこれだったらいいのになんて、思ってしまう。




「じゃぁ、俺は仕事してるから何かあったら言って・・・・って、喋れないか・・・」

「・・・・・・」

「うーん・・・・いいや。ここで仕事してるから、何かあった音立てて」



私が頷くと、綱吉様は笑って、優しく髪を撫でた。



(・・・・性格にギャップがありすぎ・・・)



優しかったり怖かったり・・・

本当の綱吉様はどれだろう。

彼はいったい・・なにがしたいんだろう・・



(ん・・・)



そんなことを考えながら私は静かに眠りについた。




「・・・・・・・」




眠っている咲希を見て、ゆっくり髪を撫でた。

さらさらとした髪が手を抜けていく感覚が心地いい。

・・・本当は知っている。雲雀に強姦されたこと。裏庭で、あられもない姿で放置されていたこと。

けど、それを口にして欲しくなかった。


独占欲が抑えきれそうになくて


病人なのにぐちゃぐちゃに犯してしまいたくなる。




「はっ・・・馬鹿だろ・・」




自嘲気味に笑った。優しくしたいのに出来ない。

どうしたら彼女は自分のことを好きになってくれるのだろう・・・

答えは至極簡単で、行動は難しい。

優しくすればいいのに・・・出来ない。




「好きだよ・・・」




彼女を前にしてそうは言えないから・・・

今君に・・・









***







「んっ・・・・・ふわぁ〜・・」




二度目の目覚め。

声も出るようだし、体もだるくないから治ったのだろう。

ふと、綱吉様を探すと、綱吉様は仕事中だったはずなのに・・・机で寝ていた。

マフィアのボスで、仕事も大変だろうに・・・・わざわざそばにいてくれたんだ。



「・・・メイド失格?」



好きでなったわけではないけれど。

しかも、強姦されるは苛められるは・・・最悪だけれど。

なってしまったなら、仕事は全うしなければならない。それなのに迷惑しかかけていない気もする。

そんなこと気にする筋合いはないのだが。




「別に失格じゃないよ」

「えっ、え! 起きて・・・」

「俺が無理やり連れてきただけだし。咲希がいてくれればいい」

「っ!? あ、あの??」




いつから起きていたのか、あたふたする私など構わず、綱吉様は手を伸ばしてきた。

ひやりとした手が頬に触れて、ぴくりと思わず目を瞑る。




「咲希はずっと俺のそばにいればいいんだ」

「綱・・吉・・様?」

「スゥーzzz」

「ねぼけっ」




頬から赤みが引かない。

冷たい手が頬を冷やしても、熱くなるばかりだ。




「なんなのよー・・・!」




まだ分からないその気持ちの正体に困惑して

私はしゃがみこんだ。

まだ貴方を、許したわけじゃない・・・
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