短篇

□落花 生
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先生、僕は死んでしまった方がいいんでしょうか。



……先生は新しく来た新人の方ですか。……いえ、困らせたい訳ではないんです。すみません。


これは、発作、みたいなものなんです。たまに無意識に口ずさんでしまうんです。そうなんです。発作……僕は病気なんです。だから、僕は母と父に見捨てられてこんな所に閉じ込められているんです。


いいんです。分かっています。そういう察する能力はまだ正常なんです。

僕をここに置き去りにした時の、申し訳なさそうな、辛そうな、……安心したかのような両親の顔、しっかりと覚えています。

別に恨んでなどいません。これは当然の判断です。



……少し昔話をしてもいいでしょうか。

お付き合いいただけますか。


僕の幼なじみの可愛い女の子の話です。


四才の頃からずっと一緒でした。幼稚園も一緒です。砂場で彼女とお城を作るのが何より好きでした。


僕は男の子で彼女は女の子。周りには僕らの仲を冷やかすような愚か者もいましたが、関係ありません。


お遊戯中も、お昼寝の時も、おやつの時も、ずっと一緒です。……トイレについていこうとした時はさすがに先生に怒られました。



小学校も一緒です。僕は本当は進学校に通う予定でしたが、子供という立場をフルに活用して泣き叫んで駄々っ子のふりをして暴れたら、僕は普段我が儘を言わないような子供だったのでなんとか幼なじみと同じ小学校に通う事を許されました。

大人の勝手な都合で大好きな幼なじみと引き離されたくなかったんです。



そして、大きな転機が訪れました。



僕と幼なじみは同じクラスでした。クラスには、いじめっ子がいました。太った男の子です。鼻水を垂らして、いつも同じ服を着た不潔で不細工なやつでした。

汚いもの程美しいものに惹かれるものです。だから、弱くて綺麗な僕の幼なじみはそいつ……そいつのままだと言いにくいのでいじめっ子の名前を仮に『A』にします。幼なじみは、Aに目をつけられてしまいました。


忌ま忌ましいあの豚が。毎日毎日僕の愛しい幼なじみに悪戯を繰り返します。……嗚呼、今思い出すだけでも吐き気を催す光景でした。


スカートめくり、流行ったじゃないですか。
Aが幼なじみのスカートをパンパンに膨らんだ顔を緩めながらめくった瞬間、あのソーセージのような指を全て逆方向に曲げてやりたくなりました。

……その時はなんとか堪えました。

幼なじみを泣かせたくなかったんです。


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