隔離部屋

□本当はとっくに分かっていた
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女は絶頂を迎えた。


息を整えるより早く、新たな快楽が彼女を貫く。

綺麗な爪の生えたつるつるとした足先で性器を踏まれるように刺激され、一回り年下の少年に弄ばれる被虐的な悦びに身震いした。


少年の名は古町恭太郎といった。

彼は学生と公務員の二足の草鞋を履いているという。あまりにも若すぎる気がするが、詳しい事情は知らないし、知る必要もない。

仕事内容はピンキリで、地域のゴミ拾い、要人の警護……例えば、大物政治家の欲求不満の妻の相手も請け負っているとか。

なら、正に今“仕事中”だ。

マゾの気の強い彼女に合わせ、攻め役を演じているというのは本人談であるが。恭太郎は間違いなくサディストだ。末恐ろしい。


彼が頑丈に後ろ手に縛った手首がもどかしくて、彼女を一層興奮させた。

畳に伏し、許容を超えた快楽にビクビクと痙攣する彼女を見下ろしながら、恭太郎は口元に嘲笑を浮かべるが、演技なのか素なのかは定かではない。

彼はつぶさに女の反応を観察し、実験でもしているかのように、どこをどうすればどんな反応が返ってくるかを探り、それらを考慮して指の一本一本を巧みに動かした。



「俺みたいな子供に好き勝手されて気持ち良いか?変態女」



なす術なく喘ぐ全裸の女を言葉で責めて更に貶める。


垢抜けない短い黒髪に幼さの残る顔、全く乱れのない学校の制服を纏ったその姿が、背徳感を煽る。

実際、これは犯罪行為だ。未成年に奉仕させるなんて。


だが、女は恭太郎の性技に心底溺れていた。


不意に、親指の擽る動きが早まった。


その瞬間、また天国に上り詰める感覚がした。


××××



ピロートークなんて甘ったるいものじゃない。


着衣を身につけ、手首の縄の痕を撫でながら女は言った。彼女はいるのか、と。

先程まで乱れていた面影はなく、まるで、慈愛に満ちた母のような顔付きだったが、好奇心に瞳を輝かせる様子は少女のようだ。



「公に認知されている彼女は居ません」



じゃあ好きな娘(こ)はいないの?と訊いた。



「好意が有るかは分かりません」



ベルトを締めながら、若者らしくない淡々とした口調で言う。

やけにひっかかる物言いは、口外が許される範囲に調整して発言しているからだろう。


もっと詳しい事が知りたいと催促すると、恭太郎は考えるような仕種をしてから。



「一般的に見ても可愛い娘だと思います」



だから、そういうんじゃなくて……。



「はっきり言って、肉欲と恋情の線引きが難しいんです。そう言うの、貴女にも覚えが有るでしょう」



若さ故の見境のなさについては確かに思い当たる過去はあるが。

上手い具合にはぐらかされたと悔しさを感じる。



「どちらにしろ、俺にとっては重要視する必要の無い感覚なので」



最後に恭太郎は、そう勝手に結論付け、これ以上は何も答えなかった。

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