蛇寮3

□warm winter
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「はぁ、寒い…」



大きく息を吐けば、白い靄が目の前を泳ぐ。セーターやら外套やら色々着込んでは来たが真冬を迎えている今、何をやっても寒いのは仕方ないことだった。
本当は魔法で感覚を麻痺させることができなくもないのだが、以前それをやって危うく凍傷になりかけてトムに散々怒られて禁止されてしまった。再びやったら怒られるどころじゃ済まないだろう、と思わずそのことを思い出して身震いする。



「何をやっているんだ」



声がして顔を上げればトム・リドルその人で。「トムのこと待ってた」と言えば、「何もこんなところで…」と言葉を切ったあと「バカか」と怒られた。



「こんなクソ寒い中わざわざ風邪をひきにきたのか?そもそもこの前凍傷になりかけただけでは飽き足らないということか?あぁ、足りないのは頭か。全く、学習能力が低い云々の前に学習能力が皆無だな」



きっと心配してくれているのだろう。不器用な彼の愛情表現は歪んでいるからいつもこんな感じで嫌味やら文句やらをつらつらと言われる。もう慣れた私は「そうだね、ごめん」と素直に謝ると決まって彼は口をつぐんだあと、そっぽを向くのだ。
一連のやりとりはもう承知しているので、寮に戻ろうか、と言えば不意に手を握られた。



「冷たすぎる」



「冷え性だから」



「ならなおさら、」と言い掛けて再び口を閉ざしたあと、手にハァと彼の息を掛けられる。まさかそんなことを彼がするだなんて思わなくて目を丸くしていれば、そのままトムの外套のポケットへと手を入れられる。しかも所謂恋人繋ぎの状態で。



「一応性別上、女なのだろう?身体を冷やすな」



「…そう、だね」



あったかいなぁ、と心も身体も火照るのを感じながら、彼と寄り添いつつ自寮へと戻るのだった。



















(今日はソトに何しに行ってたの?)
(別に大したことじゃない)
(ふーん)

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