蛇寮3

□cold×cold
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熱い苦しい怠い…
あまりの不快さに意識を浮上させれば、「起きたか?」と声をかけられた。



「ん、」



「無理して起き上がることはない」



起きようとするのを制されて、再びベッドへと沈む。衝撃にくらくらしていたら「大丈夫か?」と頭を撫でられた。



「…ムが優…いと、ンな感じ」



枯れた声で言えば「たまには僕だって優しいときはあるさ」と不貞腐れたように眉を寄せられた。



「…ト、…ん」



「あまり話すな」



口元を押さえられて、額を合わされる。水飲むか?と聞かれ頷けば、「少し待っていろ」と優しく笑った。
戻ってきた彼に支えられ身体を起こして水を入れたコップを口元にあてがわれる。ゆっくりと嚥下していくと、身体が潤っていくように感じた。



「もう少し寝ていろ。あぁ、授業内容はそれぞれお前の友人に羊皮紙を頼んであるから安心しろ」



支えられながら再び身体をベッドに預け、瞳を閉じれば優しい手つきで額を撫でられる。
温かい彼の体温を感じつつ、微睡み始めた私がぐっすりと眠るまでトムはずっと傍にいてくれるのだった。



「…ん、」



再び意識が浮上し、瞼をゆっくりと開けば周りは真っ暗だった。ごろんと寝返りを打てば、部屋の主であるトムはいなく、腰掛けていただろう椅子がベッドの脇にあるだけ。何となく寂しい、と思いながら身体を起こせば幾分か身体が軽くなった気がする。ひんやりとした外気を心地よく思いながらぼんやりしていたらぱちん、と灯りが灯った。



「起きたのか」



「トム」



やや擦れているが、聞き取れるほどは出ている声。手元を見れば、頼んでいた羊皮紙を預かってきていたらしい。



「落ち着いてから読めばいい」



私が羊皮紙に気付いたことを察したトム。頷き「ありがとう」と言えば「大したことじゃない」と素っ気なく答えられた。
素直じゃない彼を可愛く思いながら小さく口元を弛めれば、ぐぅ、と鳴る腹。そういえば朝から何も食べていなかった、と思い出しトムを見上げると「そんなことだろうとは思ったよ」と杖を振り、サイドテーブルに料理を出してくれた。



「さすがトム」



気の利く彼に賛辞を述べると「屋敷しもべが気を利かしたみたいだな」とこれまた素直じゃない言葉。



「そう。ありがたいね」



いただきます、と温かい食事に手をつける。その様子をトムに見つめられ気恥ずかしくなりながらも、空腹の欲を満たすためどんどん食べて行く。
多少時間はかかったが、すべて完食すれば「それだけ食い意地がはっているなら治りは早いな」と笑われた。



「そうね、早く治さないと。あまり長く迷惑かけられないし」



「まったくだ」



そう言いつつも、結局なんだかんだと寝るまでの支度を手伝ってくれ、一緒にベッドに潜る彼を愛しく思いながら私はトムの身体にそっと抱きつくのだった。

















(寒いのか?)
(…うん、ちょっとだけ)

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