蛇寮3
□comfort
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「バカだろう」
蔑んだ瞳で見下ろされ、返す言葉を失う。実際、バカなことをしたという自覚もあれば、やらないほうがよかったという後悔もあるからだ。しかし、過ぎた時間が戻るはずもなく、ただ小さく彼の罵倒を受け入れた。
視線を彷徨わせ、押し黙る。じわり、と裂傷を負った腕から血が滲むのを感じた。
「…腕を出せ」
言われるがまま、腕を出す。杖を振られ、段々と小さくなる傷口をじっと見つめる。
「痛くはないか」
「ん」
「ならいい」
冷たくあしらうような口調。けれど、それが彼の優しさだということはわかっている。
だから余計に心配させたことや迷惑をかけたことに対して申し訳ない気持ちが募った。
「ごめん、ありがとう」
「そんなつまらない言葉を吐くくらいならもう二度とするな」
「うん」
「…本当にお前は…」
小さく溢された小言に「ぇ?」と顔を上げる。
「…お人好しとお節介は紙一重だからな」
「うん」
頷くと優しく抱き締められた。痛んでいたのは腕ではなくて心だと気付いたとき、自然と目頭が熱くなるのだった。
やらかして、しゅん(´・Д・`)とした時の話。