教育心理学レポート
  「プログラム学習と発見学習の利点・問題点の考察」

参考文献 
作間慎一他「教育心理学」,玉川大学出版部,2005

多鹿秀継・鈴木眞雄「発達と学習の心理学」,福村出版,2000

波多野完治「波多野完治全集第10巻 学ぶ心理・教える心理」,小学館,1990









まずは、プログラム学習について説明をしようと思う。プログラム学習とは、スキナーが最初に発案した行動主義的学習法で、のちにクラウダーが改良を加えたものである。プログラム学習には、ルールとして基本の3原理と2要項がある。どういうものかと言うと「スモールステップの原理」「積極的反応の原理」「即時確認の原理」「個人ペースの尊重」「フェイディングの原理」である。(多鹿他,2000)スモールステップの原理とは、最終的な学習目標に向かって1つ1つステップを設け、確実に習得を目指す為の原理である。もしこのステップで、学習者の5%以上が間違うと、ステップの組み直しを検討する必要がある。積極的反応の原理とは、各ステップの問題に積極的に反応させ、強化を促す為の原理である。即時確認の原理とは、各ステップの問題の正誤を直ちに知らせるという原理である。個人ペースの尊重とは、制限時間などを設けず、個人個人が各々のペースで、学習を進めることができるようにするものである。フェイディングの原理とは、最初のうちはヒントをたくさん与えて答えやすいようにするが、徐々にヒントを減らして、ヒントがなくても問いに答えられるようにする原理である。このプログラム学習の利点としては、計算問題の公式や重要語句の確実な理解に役立つことと、学習者が飽きずに継続できることである。算数の掛け算を例に考えると、8×2という問題がある、これは、当たり前のことだが8を2回足すと答えが出る。これを小ステップの原理を使い、この問題を解くには8を2回足す必要があります。8+8=□と書く。数字の選択肢を与え、答えのページに進むようにする。そうすると進んだページで正誤の確認が即時にでき、理解につながる。そして、徐々に足し算から掛け算にしていくと、掛け算を理解できるようになる。また、即時に正誤が判明するので、学習者は飽きずに進めることができるのである。しかし、問題点もある。まずは、全体的な観点から見てみようと思う。このプログラム学習は使える科目が限られてしまうということがある。理科といったような実践的な科目には使えないのである。理科の概念を説明には使えるかもしれないが、やはり実験により学ぶ発見学習的科目なので、使うのは困難であろう。次に、学習者の観点より見てみようと思う。学習がプログラムに沿って進むので、学習者が個人の考えで進めることができないという点がある。前例を参考にすると、もう理解したのに足し算の問題がまだ続いたりするという状態である。これでは学習者が飽きてしまうこともあるだろう。最後に教育者の観点から見てみようと思う。まずは、全ての学習者に効果が保証されないという点がある。再び前例を参考にすると、足し算という初歩的な知識が欠けている学習者には、プログラム学習に書かれている事項を理解することがほぼ不可能である。また、プログラムを教育者が作成するのに手間がかかるという問題点もあげることができる。
 次に、発見学習について説明しようと思う。発見学習とは、ブルーナーが教育の過程の中で論じた認知論的学習法であり、自分で問題を考え、自分で答えを導き出すという研究者的学習であり、教科の構造を発見できる学習法である。発見学習のやり方としては、まず、学習者が学ぼうとする課題を設定・把握を行う。次に今まで習得した概念を使い、仮説を立てる。次に自ら立てた仮説の検証を、実験をしたり本を読んだりするといったような方法を使い行う。最後に学ぼうとした概念について、検証結果を踏まえてまとめを行い終了する。この発見学習の利点として、まずは、学習者の観点から見ようと思う。まずは、学習者が自分で考えて学習するため、学習者に内発的動機づけが生じ、学習が楽しくなるといった効果が期待できる。また、学習者がほとんど知識のない状態で始める為、情報の組織化ができ、学習の仕方の学習が可能である。さらに、新しい課題が出てきても、発見学習で発見・検証した事柄を応用できるのかどうかを考えられるようになり、可能であれば新しい課題に応用することができるようになる。最後に、自分で発見した知識なので、教育者から与えられた時よりも、記憶の保持が容易にできるのである。次に、教育者の観点から見てみようと思う。学習者が自分で学ぼうとする為、最低限の知識の提供だけで済むのである。しかし、発見学習にも問題点がある。まずは、学習者の観点から問題点をあげようと思う。まずは、発見学習では自分から学び、進めないといけない為、学習者には高い能力があることが前提となる。まだ、能力が成熟していない小学校低学年には行うことが困難である。また、学ぼうとする概念の習得を1から行う為、時間がかなり掛かるという問題が生じてしまう。次に、教育者の立場から問題点をあげようと思う。まずは、教育者が教えようとした概念に関して、学習者が間違った解釈をしてしまい、予想していた効果とは違う効果が現れることもある。また、最低限の知識の供給だけで済むというメリットの裏を返せば、教育の専門家の存在が不要となる。なぜなら、簡単な概念の説明は、その知識がある一般人でも十分できるからである。これにより教師の専門性が薄れてしまう、という問題を生みだしてしまう。最後に学校教育、特に義務教育という立場で見てみようと思う。発見学習は学習者がずっと1人で行う学習の為、教育者は口を出すことができない。教育者と学習者のコミュニケーションが重要視される義務教育には使うことが難しいのである。さらに、全ての義務教育が発見学習になると、コミュニケーションによる学習者の積極的な能力の開花も期待できない。やはり、教育は学習者の自発性だけではなく、教育者と学習者とのコミュニケーションとても大事なのである。

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