基礎心理学レポート
「ひととのかかわりにおける感情・情動の生起とコントロール」

参考文献 
斎藤 勇「感情と人間関係の心理―その25のアプローチ―」,川島書店,1986














今回は、人との関わり(=人間関係)における感情・情動の生起とコントロールについて論じていこうと思う。
まずは、感情と情動について定義しようと思う。感情と情動は、生物学的基盤に基づいた全ての動物、人間にあるもので、認知の働きや社会的行動の基盤となるものである。人間の意思決定にある程度必要な情報であると言えよう。斎藤(1986)によれば、ジェームスの理論から感情はさらに明確に現れる「粗野感情」とあまり明確に現れない「繊細感情」という2種類の感情に分けられる。明確に現れる粗野感情と深読みで読み取れる繊細感情を使い、我々は意思決定を行っているのである。また情動(=情緒)に関しても斎藤(1986)によれば、本能を形成するひとつの要素としている。つまり、生得的に持っている目標、例えば、怖いから逃げる。を実行する1つの要素である。
 では、人間関係においてどのようにこの感情・情動が作用しているか、実際に見ていこう。まずは感情と人間関係について、人は誰でも人間関係において、他の分野以上に知識がある、それは常識でもあるとしているのがハイダーである、このハイダーは対人感情と最も深く関わっている感情のバランス理論を提示した人でもある。この理論より、感情と人間関係についてが見いだせる。まず、人間には必ず好きな人、嫌いな人がいる。ここで言う好きな人とは、好意や愛情を感じられる人。嫌いな人は嫌悪や憎悪を感じる人である。当たり前であるが、我々は好きな人の前では、大切にしないと。や、一緒にいて楽しい。などポジティブな感情が現れる。一方、嫌いな人の前ではこの人どうでもいい。や、消えてしまえ。などとネガティブな感情が現れる。また、ある日○○は君が好きらしいよ。と言われたら、○○に対しポジティブな感情が現れる。そこでハイダーは、我々がどのような時にポジティブ感情あるいはネガティブ感情になり、その人に対してどのように、心理や行動が変化するのかを考察し、次のような仮説を立てた。「感情傾向と単位形成はバランス状態に向かう傾向がある」(斎藤、1986より引用)。ここで、補足を加えたい。単位形成と言うのは、「二つのものや二人の人が一体であると知覚されたとき」(斎藤、1986より引用)である。バランス状態と言うのは「単位形成された時、感情面においてもストレスがなく、調和がとれ、安定しているとき」(斎藤、1986より引用。作者により一部表現を変更)である。逆にこのバランス状態が形成されないときを、インバランス状態という。この時、人はストレスを感じるのである。社会生活を営む上では、バランス状態である必要がある。そこで我々は、あの人は嫌いという感情を考えなおしたりして、バランス状態を作るように、感情をコントロールできる能力があるのである。
 次に情動と人間関係について見ていこうと思う。誰かから助けられて喜び、軽蔑され怒り、自分の行動に後悔する。など人間関係における情動は色々とある。斎藤(1986)によれば、それゆえ、人間関係的な基盤の上に立たないとならないとしている。また、こういった研究を始めたのはケンパーという人である。そして、ケンパーは人間関係において、3つの情緒を定義したのである。1つ目は「構造的情緒」である。これは、自分と相手との勢力関係・地位関係において生起されるものであり、この勢力関係・地位関係が適切であると感じた場合であれば幸福感・安心感といった安定の情緒が生じる。また、自分の勢力関係・地位関係が思いのほか高すぎると感じた時には恥ずかしいといった情緒が生じたり、罪悪感や不安感という情緒が生じたりする。逆に、自分の勢力関係・地位関係が思いのほか低すぎると、憂うつ感という情緒を感じたり、恐怖や不安感という情緒を感じたりする。2つ目は「予期的情緒」である。これは、我々がある人との関係において、将来を考え改善を望む、変わらないでいて欲しいと願う、悲観するという情緒である。この情緒は、我々の経験の差より生起される情緒が変化するものである。具体的に言うと、今までの人間関係がかなり円満で、成功していると感じる人は楽観的考え、いじめられたり、疎外感を感じさせられたりして、人間関係に失敗している人は悲観的になる、ということである。また、当面の人間関係が成功すると確信度も情緒生起の要因の1つであり、自分の知識・力量などで判断される。良いと予測できれば楽観的になり、悪いと予測すれば悲観的になる。3つ目は「帰結情緒」である。これはある人との関係において、前述した構造的情緒と実際の相互作用が融合し、導き出された結果に対して生起する情緒である。1と2を合成したものであると言える。
以上3つの情緒をコントロールできるかという視点で見ようと思う。構造的情緒は関係を改善することでコントロールが可能であり、予期的情緒は考え方を変えるよう自分でコントロールできるだろう、その2つが合成されると自然と帰結情緒もコントロールできるであろう。
 ここまで、人間関係と感情・情動について見てきたが、生起した感情・情動は自分の考え方を楽観的に持っていくということで、よりよい人間関係につなげるようにコントロールできるのである。しかし、悲観的に持っていくこともできるといったことも考えられる。だがしかし、人生において人間関係というのは宝物であり、大切にしないといけないものである。感情・情動を生起させたまま、良い方向にコントロールしないのは人間関係の崩壊につながる、なので、悪い感情が生起したらいかに楽観的なものに変える力こそが、世渡り上手になる秘訣ではないだろうか。

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