ついんず
□06
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嫌だ。絶っっ対行かねぇ!宍戸、声、言葉使い。
そんな事を言っていたのももう30分以上も前の話。
現在晶、仁、亮の3人は大通りを歩いていた。新しくショッピングセンターが出来て、前々から行こうと言っていたのだ。
「あの人たち超格好良くない?」
「ねー!モデルかなぁ?」
「黒髪の人めっちゃイケメン!」
「いやいや銀髪の人の方が…!」
「あの真ん中の子超かわいくね?」
「うわーすげぇ美人!」
周りの人たちからの視線を集めて歩いていた。亮がいつにも増して綺麗に仕上がったことにテンションが上がった晶と仁が、とことん自分たちもオシャレしてきたのだ。仁なんていつも逆立てている髪を下ろしてワックスで様々いじっているので、恐さがいつもの8割減の格好良さ7割増である。しかも全体がうまくいっていて機嫌がいいのでオーラがキラキラしていた。
ふははは。可愛いかろう!格好良かろう!
晶と仁の心の中なんてそんなもんだ。
「ねぇ、お腹すいちゃった。何か食べよう?」
くいっと服のすそを引っ張って若干上目使いで頼んで来た眼鏡女子こと宍戸亮。奴は小学生の頃から女装させられ、外では堂々と女を演じた方が変じゃないことに気付いてから演技派に。声から表情、おねだりに笑い声まで完璧だ。そこらにいる女よりも数倍可愛い。
小さいころから女装させててよかった!なんて可愛いんだ!
晶さん、あなたは女性です!
にやにや鼻の下を伸ばしている黒の男と、にこにことその黒に腕を絡ませている女。誰が性別が逆だと思おうか…!白の男は人知れずため息をついた。
「…はぁ。俺は何時までこうしてればいいんだよ…!」
店員に奥の方の人目に付かない席に案内されると亮はいきなり声の高さを元に戻した。表情を女モードのまま声だけ戻すから2人は違和感を感じまくって仕方ない。
『家帰るまでに決まってんだろ』
「あと2〜3時間程度だ」
「長ぇっつーんだよ!本当に激ダサだぜ。学校の奴らに見つかったら…!」
お前のそのアンバランスな状態の方が激ダサだせ!晶と仁は言葉を飲み込んだ。
『今まで会ったって気付かれた事ねぇだろ』
「…バレても面白ぇよな」
『…ばらしてみる?』
「絶対やめろ!面白がってんだろてめぇら!」
『まさか』
「まさか」
ハモりやがった…!ムカつく…!お前らにやにや笑いやがって、説得力皆無だからな!
『亮、いい加減声戻さないと』
「運悪く通っちまった奴のトラウマになるぞ」
今だ女の顔でにこにこしながら男の低い声で話す亮は、何も知らない人が見たら本当にトラウマものだ。
「…2時間以内で絶対帰ろうね」
諦めのついた亮は元の女声に戻した。
やっぱり可愛いーー!亮ちゃんお嫁に来て!…今度はウェディングドレスでも着させてみるか。断る!
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