ついんず

□08
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"ファンが観たいものをやる"

"最高のショーだ"

"This is it!"



「…おい、どうした」

『…いや、なんでもねぇ』

朝、いつものように晶の家に泊まった仁は、いつものように神崎家の食卓で朝ご飯を食べていた。ふいにつけたニュース番組の芸能ニュースに珍しく釘付けになっている晶に、仁は思わず声をかけた。いつもなら以心伝心勝手に相手の考えてることがわかるが、何故かそうもいかない。
ただ、テレビの画面に映る跡部などよりもキングと呼ぶに相応しい、外国人の歌とダンスの王がコンサートをやると言った姿からなんとなく晶の思考が読みとれる。

『悪ぃ、仁!うち、やんなきゃいけない委員会の仕事あったの忘れてた!先行くな!』

「は?」

口を開けた晶からはてっきり今のニュースの話しが出てくるだろいと思ったが、飛び出してきたのは先に家を出る理由。おい、ちょっと待て!仁の言葉も無視して家から出て行ってしまった。爽やかに笑って。その後ろ姿に、仁はなんとなく自分の相方の考えていることがわかった気がした。




















『おはよーう!』

「あぁ…晶先輩っすか、ちわーっす」


風紀室のドアを開けると部屋の中から物凄く眠そうなスウェット姿の山田がでてきた。晶を尊敬しているのだろう、もちろんスウェットの色は黒だ。

『山田また学校泊まったのか…』

「帰るの面倒なんすよ」

『面倒ってお前な…。確か歩き登校だろ…』

「あーあーあー聞こえねぇっす」

『……』

夜の風紀室のソファは最早山田のベットと化していた。山田が前に家に帰ってから早三週間。いや、帰れよ。晶に言われるのもいつものこと。


「それより、晶さんどうしたんすか?珍しく早いっすよね」

ちょっと調べものしようと思ってよー
気の抜けた返事が晶の部屋から聞こえてきた。おそらく、制服からいつものつなぎ姿に着替えてるのだろう。
がちゃり、とドアが開いて案の定真っ黒なつなぎ姿で。手にはノートパソコンだ。このパソコンの色も勿論黒い。そして山田が色々と改造を加えたものだった。実はこのパソコン、山田が風紀委員に入る時に晶にあげたもの。晶がこれを使うと、山田の機嫌がよくなる。嬉しいらしい。かわいい奴め。

山田が寝ていたソファーに座り、山田がかけていたであろう毛布を畳んで隅に置いた。山田、コーヒー。と一言言ってパソコンを起動し始める。その声に珍しく反応した山田が自分の分と晶の分のコーヒーを入れて持ってきた。…なんだ、自分が飲みたかっただけかコノヤロー。

「なーに調べてんすか?…NJ?…コンサート?」

『あぁ、そうかお前テレビ見てねぇのか…。今度NJがコンサートやるらしくてな、ダンサーのオーディションやるらしいんだ』

「っつーことは…」

『オーディション、受けてみようと思って』

晶は恥ずかしそうに笑いながら言った。こんな顔も出来るのかこの人。とにかくまともに笑えるイメージが無さ過ぎる。それより、

「え、え、え、えぇーっ!まじっすか!NJってあのNJっすよね!?うわっ!俺マジ応援します!頑張って下さい!晶先輩なら絶対受かるっすよ!俺本当超応援します!」

自分よりも山田は目をきらきらさせて興奮していた。久しぶりにこんなに興奮した山田を見た気がする。しかしそんなに興奮されると恥ずかしい。本当に恥ずかしい。山田がこんなに興奮するんなら日吉は一体どうなるんだろうか。と一瞬頭にぎるが、どっちにしても応援してくれるのは嬉しい。絶対このオーディション受かろう、と決意を固くした。

『あぁ、頑張るよ』






ある決意の朝


(えぇぇぇえ!晶さん、NJのオーディション受けるって本当ですか?!)
(お早う日吉、情報速いな)

(さっきそこで山田に…、って本当なんですか!俺超応援します!絶対晶なら受かりますよ!なんてったって…(中略)…なので、絶対大丈夫です!)

(………おう、さんきゅ)

(長ぇよキノコ)



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