ついんず

□07
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PM7時半、ストリートテニス場の隣にある小さな公園。そこで騒音にならない程度の小さな音でアップテンポな音楽を流し、闇に紛れて踊る人影があった。長い手足をふんだんに使い、情熱的なダンスを黙々と踊っていた。誰がみても上手いというような腕前で、ストリートテニス場に来た学生たちが目的を忘れて見惚れている。本人はただテニスをする友達を待っている間に軽めなダンスを踊っている程度のつもりだったのだが。


観客多い…!多いよ…!散れ!解散!!つーかあいつ遅い!
家でだらだらしていた仁の元にどこからか愚痴が届いた。俺に言われたってどうしようもねぇよ!…その通りである。


ダンスを踊る人影、もとい晶は待ち人が早く来ることを必死に願っていた。やっぱりダンスは表現が大事。思っていることが現れるらしい。
…あれ?なんか雨乞いみたいになってね?
いや、あれはなんかの祈祷だよ。
観客からそんな声が聞こえてきたころ、奴はやっと来た。






















部活が長引いて少し遅れてしまった。彼女にメールは送ったが、見ているだろうか。彼女の事だからメールも見ずに踊っている確率は87%なのだが…。


約束のストリートテニス場につくと、案の定隣の公園に人だかりが出来ていた。…やはりな。彼女のダンスの腕前は相当凄い。俺はダンスについてはよくわからないが、それでも彼女が相当上手いということがわかる。彼女とはまだ1年程度の付き合いしかないが、彼女が野菜作りとダンスに掛ける情熱はとてつもないものだというのは肌で感じるのだ。

…さて、そろそろ声を掛けないと彼女が本気でキレてしまう。



「晶!」


『貞治!






…遅いんじゃボケー!!』ドカッ



人だかりの中から跳び蹴りで華麗に参上した彼女、改め神崎晶と、その跳び蹴りをもろに喰らってチャームポイントである逆光メガネをふっとばされたデータマンこと乾貞治。今回はこんなの2人のお話。



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