暖かな気温


□れっつ狩り!
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うわーだのギャーだの朝から煩いってんですよバーカ!なんで昨日といい今日といい、朝から悪態吐かなきゃなんないんだよ。安眠妨害で訴えんぞマジで。王宮内に響く慌ただしい足音に、声。町の方から聞こえる悲鳴?此処まで聞こえるとか何事だよ。あーでも私にゃ関係無い知らない分からない理解したくないー。部屋の前に気配が二つ。扉を叩く音が静かな此の部屋に疎ましい程大きく聞こえ、耳を塞いで知らぬ存ぜぬを突き通す。突き通させて頼みます。

「夜尋、起きてください」

ぅあ"ーまさか選りにも選って…なんでジャーファルが起こしに来るんだよ。マスルールも付いて来てるみたいだし。要するに強行突破を行使するって選択肢があるってこったね。あーどうすればいいどうしよう。と、取り敢えず知らんぷ…、。

「夜尋、分かってるんですよ。早く出てきなさい。ドアぶち壊しますよ?」

『あははーやあおはようジャーファル君爽やかな朝だねぇ丁度今出ようとしたんだよ』

うん此奴なら本気で壊しかねないいや壊す。マスルール連れてきてる時点で其はもう手段の内だよねー分かってたさ。だって笑顔が黒いもの。笑ってるけど目が起きてんならさっさと出てこいよ手間取らせんな。って言ってるもの。寝起きにしてはかなりの速さで扉開けたのにー。おうぼーう。まおーう。

「おはようございます。夜尋。何か言いました?」

『いえ滅相もない。マスルールもおはよう』

「…………おはよう」

「って言っても、もうお昼なんですけどね」

呆れた様に溜め息を吐くジャーファル。溜め息吐くと幸せ逃げちゃうぞ。口が裂けても言わないけど。怖くて言えないけど。そして王宮内は斯うしてる間も煩い。

『…何があったの?』

「説明は歩きながらするので、着替えて下さい」

おーぅ私今寝間着か。なんせ今起きたばかりですものね。なんなら寝たふりしようとしてたからね。廊下で一寸待っててもらい昨日買った服を手に取る。寝間着を脱いで、素早く真新しい布に腕を通す。大きさは丁度。着心地もいい。其の場で数回跳ねた後、帯紐に剣を挿す。うん。帯刀すると気分がまた違うね。あんま使わないだろうけど。後、先日取りに行った使い馴れた愛用の武器も服の内側に仕舞う。よし準備かんりょー。廊下に繋がる扉を開けて、待たせてあるジャーファルとマスルールに話し掛ける。

『待たせて悪い、終わったぞー』

「「………」」



はい、無反応頂きましたー。此方を呆けた顔で凝視してくる二人。アクション無いのが一番辛いんだぞ知らねぇだろ。なんかあんなら言えよなー。文句を目で表せば、其に気付いて口を開いたジャーファル。

「…吃驚しました。凄く似合っていますよ」

昨日買った服ですか?って質問に頷く。マスルールは相も変わらず無表情。只若干眠そう。でも頭撫でてくれてる。もう少し、もう少し力を緩めてさえくれれば撫でてる、ってことになるのになー。我が儘かなー?

『で?』

「近海に南海生物が出たんですよ」

『南海生物……』

激しく否定したいが聞いたことあるような。あれだよね。あの時船で望まずして見て、拒めず臨み挑んだでっかいウツボ。名前忘れたけどウツボ。あれが出たの?

「さぁ、行きましょうか」

『なぁ…其って急ぎ?』

時間が惜しいとばかりに背を向けたジャーファルに問うと、ジャーファルは若干焦った様に振り返り肯定する。あー、引き留めてごめんねそんなに焦んないでよ怒んないでよやだなぁ。急がば回れ?はは糞喰らえ☆早いに越したことはないだろ。

『急いでんなら早道あるよ』

「…え?」

『マスルール』

ジャーファルが只管疑問を浮かべている間、マスルールは私の言葉の意図がわかったのか私の称呼に頷いた。呆然としたジャーファルの手を引っ張って自分の部屋の中に入り窓に歩み寄る。マスルールも其の後ろに付いて入ってきた。よし。

「ちょ、夜尋…。まさか、もしかして」

『うん答え敢えて聞かないけど多分正解。さあ、いっちょ行きますか!』

掴んだ儘の手を不意に思い切り引いてジャーファルの体勢を崩させる。其を転ける前に受け止めて横抱きにした後、窓の縁に飛び移り其の儘身体を宙に投げ出す。

「ちょ、自分でっ!?」

ジャーファルの声を無視して後ろ目に確認すれば、マスルールも其の大きい身体を宙に擲った。浮遊感に身を任せるとジャーファルの腕が首に巻き付く。力入りすぎかな、きつい。ちょ、入ってる入ってる決まってますよ?あれ、此落ちる?物理的に現在進行形で落ちてるけど其以前に私ジャーファルに殺られるんで無かろうか?え、死ぬ?

『ちょ、ジャーファルあんまくっつかないでよ。地面見えなかったらちゃんと着地できねーよ?』

「だ、って」

しがみついてるのもしかして無意識?ははビビってるジャーファル可愛い。まぁ、自分で飛ぶのと、そうでないのとでは怖さ違うからね。でも笑っていられるのは今の内かな…後で殴られるだろうし。かなりの距離を一瞬で直下して地面にすとんと下り立つ。…マスルールの方が地面に早く着いてたのが腹立つ。ジャーファルを地面に下ろして、私を置いて逃げる様に走り出した行動の早いマスルールを追い掛ける。畜生先に逃げやがって。確かにやろうと提案したのも巻き込んだのも私ですけどもマスルールも一緒にやったんだから共犯者でしょーが。捕まったら憾んでやる。

「夜尋…」

うへー後ろ見たくない。取り敢えず後でな。急いでんだろ?そしてあわよくば忘れてください。幼気な位ほんの僅かで微かな希望を胸に抱き持って、背中に浴びせられる視線と殺気を気付かぬふりして振り向かずマスルールの後ろを追う。マスルールが止まったのは大きな崖の手前。其処に沢山の衛兵、マスルールとジャーファルを除いた八人将とシンドバッドが居た。

『わーなんか一杯』

「お、夜尋……似合ってるじゃないか!」

走り寄ってくるシンドバッドを避けると追尾してきた。本気で逃げるつもりがないから直ぐに腕に捕まってぎゅうっと抱き締められる。可愛い連呼すんな。つか此処まで結構焦らされて急いで来たんだけど…。え、心持ち余裕ですな。と、思ったら横に並んだ衛兵が鐘を鳴らした。煩っ!?え、ちょ、煩っ!?周りの皆は周りの馴れてるようで此の鐘を聞いて表情を変えた。あーやっぱ流石上に立つ者、だね。
崖の下の方から国の人達が、破壊音や何かの鳴き声に勝るとも劣らない大きな声で王や八人将を呼ぶのが聞こえた。其に応えるかの様に皆が崖の方に進んだ。私はシンドバッドに肩を抱かれた儘一緒に進む。…え、待って此変に視線向けられるんじゃない?見られるんじゃない?目立つんじゃない?えーやだー。嫌々と後ろに下がれば黒いジャーファルに笑顔で背中を押された。あ、あれー?ジャーファル君ー?前を見れば崖の下を見れば笑顔で歓声を上げる国民達が居る。思わず息を飲む。







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