暖かな気温


□財布忘れず買い物
1ページ/2ページ



朝の陽射しが私の睡眠を邪魔します。畜生太陽め消し去ってやろうか。脳内で声にならない太陽にとっちゃとばっちり、濡れ衣以外の何でもない悪態を吐く。いや、太陽好きだよ。只朝が早いんだよ年寄りかって位。もうちょっと後でいいよ。後二時間寝かせて。窓から射し込む光を遮るように頭まで布団を被る。暑い。夜あんな寒いのに。でも寝れたらいいや。

「夜尋たーん!」

…無視。ノックも無しにドアを壊す勢いで入って来たとか知らない。私の名前を呼んでるとか聞こえない。気にしない。気にしたら負け。絶対に寝れなくなるから。情報をシャットアウトしろ忘れろさあ、寝ろ私!狸寝入りは私の特技だろ?

「夜尋ったらー!」

っぐ…。まさかの強行手段乗る、だと?卑怯だ!止めろ布団を剥ごうとしないでくれ。有意義な睡眠の時間を奪わないでくれ。あぁ…、今日はもう無駄かな?諦めよう。

『ピスティ起きるから退いて重い』

「わー、失礼だよ!もう。夜尋はお寝坊さんなんだから!」

そう言いながらいそいそと私の上から下りる。うん女の子に重いは失礼だったねごめんね。じゃあ手荒な真似は止めてくれ。後、呼び方安定させてくれ。

『誤解だって。寝たの遅かったんだよ』

「えー?何時寝たの?」

『空が白んだ頃』

「其早朝だよねぇ?」

早朝とも言うね。私の答えを聞いてピスティは呆れた様な顔をして溜め息を呆れた様な吐いた。仕方無いじゃない。昨日あんだけマスルールと寝たんだから。自業自得言うなし。

『今昼?』

「そーだよー!」

道理でお腹が空腹を訴えるわけだ。一度目が覚めて気付くとどうしようもないよね。ん?何ニコニコと笑ってんですか。何故だろうこんなにも純粋な笑みなのにも拘わらず裏があるように見えるのは。私の目が純粋じゃないから?私に偏見があるから?

「えへへー今日ね、」

あんまし聞きたくないなぁ。嫌な予感しかしない。あぁ、どうやら私の心が汚い模様。

「街に下りるよ!」

『……はぁ』

街に。どうぞいってらっさい。楽しんで来てくださいね。用は終わり?飯食べにいっていいかな?私の反応がつまんなかったのか、頬を膨らまし口を尖らせた。…可愛いだけだよ。

「夜尋も行くんだよ」

『えー…』

「夜尋の服とか買いに行くんだから」

『えー…・・・・・・はい?』

何故に?なんで?わっつ。私別に服要らない。ってかなんでそんな話になってんの?あー、寝起きの頭には受け止められない容量。再びにこにこと笑ってベッドに座る私の前で腕を組んで立っているピスティ。

「王サマがねー、女の子なのに服がないのは可哀想だってお金くれたんだよ!」

『ジャーファルは?』

「ジャーファルさん?ジャーファルさんは最初戸惑いながらも承諾してたよ!」

逃げ道無しか。あの馬鹿王め!別に服なんて此の文官のでいいのに。着心地いいし。暑いし、でかいけど。動きやすいから。

「さ、行こう!」

『直ぐかよ』

腕を掴まれてベッドから引き摺り出される。其の儘引っ張られ自室のドアを潜り、廊下を走って王宮を出る。駄目だ行動が早いマジ早い。然う言ってる内に沢山の人で賑わう市場に着いた。やっぱ皆笑顔だなぁ。擦れ違えば挨拶を交わし声を掛けてくれる。どうやら皆私のことを知っているようで疑問を抱くも直ぐに考えることを放棄する。…ぐんぐんと進んでくなぁ。着いたのは女性ものの服が一杯置いてある其なりに大きい服屋。中には私より幾つか年上の女の子が騒いでいる。堂々と店に入っていくピスティに引っ張られて気後れしながら入る。

「夜尋はどんな服着たい?」

『別に…安くて動きやすけりゃなんでも』

「ふーん…そっかー」

なんだ其の含みのある言い方は。気になるじゃないか。何企んでんの。服を見て何か真剣に呟いてるピスティを横目で盗み見て自分も手元にある服を見る。う〜ん。動き難そう。此方は…色鮮やかすぎてなんか落ち着かん。分厚い。ぼーっと服を選ぶでもなく文句を言いつつ見るだけ見る。

「夜尋此方来て!」

『ん〜?』

ピスティの左横の棚には服の山。さっきまであったかこんな山。いや、あったってことにしとこう。じゃないとなんか私駄目。山を視界に入れないように目を反らしピスティを見る。

「此なんか夜尋にどうかな?」

…うん。ヒラヒラだね。動き難いだろ其。首を横に振って拒否の意を表す。ピスティは大したショックもなく其の服を左にいる店員に渡す。おいおい商品。成る程。山はピスティがある程度厳選したものなんだね。

「此はどう?」

『う〜ん…』

ピスティの選考してくれた服を横に首を振ることで悉く否定する。申し訳無い。其でもピスティは、楽しそうに服選びをしてくれている。否定しかしてないのに。

「夜尋はなんでも似合いそうだしね」

『そんなことない』

「あるよー!だって此の服の山、全部夜尋に似合うと思って選んだんだもん。夜尋は謙虚すぎるよ」

謙虚?まさか。私は傲慢だよ。自分勝手で自己中で只自分が良ければ其でいい人間だよ。謙虚って言葉とは全く真逆で正反対の人間なんだから。
顔に出ていたのか、ピスティはムッと拗ねた様な顔をして私に近付く。小さな身体には似合わない程大股で寄ってきて咄嗟に後退るも隙間は直ぐに埋まって目の前にピスティの顔があった。手が延びてきて思わず目を瞑る。両頬に手が当たり、摘ままれ左右に伸ばされる。しかもかなりの力で。思い切り目を見開いた。

『い、いーはーいぃ!』

「夜尋の馬鹿ちん!もっと自分に自信持ちなよ!」

頬が離され冷たい手が添えられる。下から覗う様に見るピスティに視線を遣れば、怒った表情らしきものをしている。怒ってるのかわからないけど、多分雰囲気が怒ってる気がする。

「遠慮なんかしなくていいんだよ。私達はもう友達だし、私は夜尋のこと大好きだから」

『…あ、ありがとう』

「ふふ、じゃあ服選ぼっか!」

先程よりは小さいとはいえ、まだある服の山にうんざりする反面嬉しく思った。ピスティが私に似合うと思って選んでくれた服だから。まぁ着るかどうかは別として、だけど。

『ぁ…』

「ん、何れ?」

『えっ、と…此』

私の要求を飲んで服を捌いていき、山がどんどん小さくなっていく。そんな時に見付けた、服の山の中にあった一着に目が留まった。私の声に反応したピスティは視線を私の視線の先に向ける。そして、声を上げる。

「此?」

『うん』

「此ね、私も夜尋に一番似合うと思ったんだ!色合いとかもぴったし!」

落ち着いた蒼、濃紺に薄ピンクや白の模様が入っている。ヒラヒラせず、動きやすい。露出もそんなにそんなに高くない。武器も隠せる。

『此気に入った』

「私もいいと思う!…王サマも喜ぶし…」

何と無くテンションが上がってピスティの最後の言葉を聞き逃した。えへへ。服を見て緩い笑みを浮かべる。

「後何着か選ぼうか」

『うん!』

似たようなやつとかを幾つか購入して、店を出た。陽の光を眩しく感じたけど其すらも気分を高揚させるものだった。ぐぅううう〜…。







次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ