暖かな気温


□迷子対策→案内
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『ふー。御馳走様でした』

積み重なった食器に手を合わせて笑顔で言う。いやぁ美味しかったシンドリア最高!ん…?皆やたらと私をガン見してっけどどうなさったんで?

「し、信じらんねぇ…」

『ぅ…?』

「夜尋の何処にあれだけの食料が…」

『ぇ、腹じゃね?』

「さっき食べた分の倍近く…」

「えっ!?夜尋此の前にも食べてるの!?しかも此の半分!?」

『お、おう』

食べましたけど…何か変?あ、量?はは何時ものことです。ちょいちょいと肩を突かれて、其方を見ると、お兄さんが口をもぐもぐと動かしながら此方を見ている。ごくんと飲み込んでから口を開く。飲み込んでから呼べばよくないか?ツッコんじゃ駄目なのか?

「…此も、美味い」

『マジか!…ふぉおお!』

食べやすいように千切られた肉をぐいっと差し出されマスルールの指ごと齧り付く。おぉう美味い!ほんとシンドリアの飯美味しい!

「夜尋」

『ん、何?ジャーファル』

「果物、食べますか?」

『え、いる!』

即答ですよ。果物大好き!ピンクの其は甘い匂いをしていて、ジャーファルの手で剥かれていく桃をうきうきとしながら見る。皮あっても大丈夫って言ったけど無視…。おいシャルルカン君今なんて言った?餌付けだと?違う断じて違うぞ!此は単純に頂いてるだけだ!ジャーファルに因って目の前に出されたお皿に目を遣る。ぐ、うさぎだと!?お母さんめ。つか桃でうさぎって器用だな!

「此の果物を食べ終えたら王宮の案内をしましょう」

『おー。此処広いから覚えられっかなぁ?』

「大丈夫ですよ」

果物を食べ終わり果汁でベトベトになった口許を拭いて、椅子を鳴らして勢いよく立ち上がる。皆も同時に立つ。

「じゃあ、皆さんは仕事に戻るように」

其のジャーファルの言葉に皆が異議を唱える。

「え〜!ジャーファルさんだけズルいですよ!私も夜尋たんと居たいー!」

「わ、私も!夜尋と魔法の話がしたいです!」

「俺も夜尋と戦ってみてぇです」

「おや、皆さん仕事を終わらせたんですか?」

う"っと言葉を詰まらせる三人。言ってくれてることは嬉しいけどね。あ、シャルルカンは嬉しくない。めんどくさい。皆渋々と食堂から去っていく。

「さあ行きましょうか」

『うーぃ』








「此処は銀蠍塔。皆が訓練する場です」

広い部屋を見れば、皆が武器だったり、魔法だったり、素手だったり各々修行してる。

『ほうほう。はいはーい、ジャーファルせんせーい』

「はいなんですか、夜尋」

『此処って私も使っていーんですかー?』

「ええ、いいですよ」

にっこりと笑って言うジャーファルははっきり言って美人。いや、マジで。花が舞うよ。クーフィーヤも凄く似合ってて美人だし、ノリ良いし、黒さえなきゃ完璧なのに。

「但し、怪我をしないようにしなさい」

『…はい?』

「わかりましたね?」

『……はい』

ああ…黒い。超絶黒い。いや黒くても美人さんなんだけどね。…てかさっきから思ってたんだけど、ジャーファルってお母さんじゃない?

「何考えてるんですか?」

『イエナニモ』

えー、読心術取得済み?もう魔王じゃん。っと。横目でジャーファルを窺っていると目が合ったから即座に反らす。うわ余計不味いじゃん。

「?次見に行きますか」

『お、おー!』

腕を引かれながら次の場所に行くまでの廊下を歩いていると、擦れ違う人達から好奇の視線を感じる。ひそひそと此方を見ながら話したり、不躾に見てきたり、話し掛けたついでにジャーファルに聞いたり。んだよコラ喧嘩売ってんのか?直接聞いてこいや。苛々してることがバレたのかジャーファルは周りを見渡し苦笑いを溢し、私と向き合って背を屈めて頭を撫でる。

「すいません。気になりますよね?急ぎましょうか」

『ん…』

なんか此処に来てから頭よく撫でられんだけど…いっか、嫌じゃないし。ジャーファル偉い人らしいから…まぁ、こんな知らん奴と歩いてたら気になるよなしゃあないよなうん我慢。

「此処は黒秤塔。食客の人達が学ぶ為の塔です。図書館もあるので是非利用してください」

『おーう』

うっげ超静か。此の黒秤塔?よりさっきの身体が動かせる銀蠍塔の方がいいや!頭動かすの疲れるし。私こーゆうの真っ先に寝るタイプだし。駄目人間言うなし。身体が正直なんだよ仕方無いじゃんかねぇ。

「白羊塔。此処は政務官である私や、文官の仕事場です。先程のシンの執務室も此処ですよ」

『へー…仕事場』

「彼方に見えるのは赤蟹塔。夜尋とは直接関係ないですが、軍の武器庫です」

『そーゆうの私に教えていいわけ?』

「おや、夜尋は何かするつもりなんですか?」

『え、まさか』

え、何?もしかして疑われてるの此?気付かれない程度に顔を顰めれば、其に気付いたジャーファルが微笑を浮かべた。表情の機微に敏感だなぁ。
大丈夫ですよ。大体、夜尋はそんなことする子じゃないってわかってます。って笑って言うジャーファル。裏切りはしないさ。裏切れない。救われたんだから。大切だから。

「此処は紫獅塔と言って、王と、王に近しい者の寝室があります」

『ふ〜ん。八人将もか…』

なんか眠くなってきた。飯いっぱい食ったし、今日暖かいし。体力も魔力も使ったし疲れた。王宮内は仕事中だからか基本静かだし。鳥さん鳴いてるし。

「此処は食客などの部屋がある緑射塔です。一人部屋や合同部屋もあります」

『んー…』

「夜尋?」

『ん?』

「眠いんですか?」

いえす。案内してもらっといてかなり失礼ですが眠いです。首を縦に振ると、私の頭を撫でつつ首を傾げたかと思えば、急に大声を出した。なんですか吃驚するじゃないですか。瞼は現在進行形で落ちてきてるけどね。ちょっとやそっとじゃびくともしませんでした。

『なん?』

「すいません。シンに夜尋の部屋を何処にするか聞いてません」

……私が悪いですね。ってゆうより私の空気読めない腹が悪いですね。要するに私のせいですねごめんなさい謝らないでください。

「シンに聞きに行きますか?」

『ん〜…仕事中悪いし別にいーや』

折角頑張ってんだから邪魔したくないし。晩飯食いっぱぐれるのやだし、シンと一緒に食べたいし。うーん、と唸って考える。目を閉じたら瞼開かなくなりそうだ…あれ、そーいえば…

『ジャーファル仕事は?』

「え…?ありますけど…」

『じゃ、やってきなよ』

「ですが…」

『別に部屋じゃなくても寝れるし。寧ろ寝れれば何処でもいーし。ジャーファル確か政務官だっけ?こんなことしてる間にも一杯ジャーファルが必要な仕事溜まってんじゃないの?朝から賊とか私とかに付きっきりな訳だし』

目を見て言えば、焦ったようにでもだの然しだのと接続詞を言い繋ぐジャーファル。笑って私は大丈夫だと言えば、心配そうな顔をした。

「そうだ、私と来ますか?」










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