暖かな気温


□交戦、好戦、抗戦
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「ゲームだぁ?」

誰かが呟いた言葉に空気が変に重くならないように笑って頷く。あれ…なんか空気固まってない?此はもしかしなくても逆効果か。確信はしてたけど。誰にともなく囁くように澄んだ声で云う。

『誰でもいい。一人でも二人でも勿論、全員でも。今から私と殺り合おう。アンタ等の船で。その間此の船は動き続ける。私を倒した後なら私をどうしようが此の船をどうしようがアンタ等の勝手。要するに鬼ごっこ。どう?いい余興でしょ?』

「おいおい嬢ちゃんが相手かよ」

『不満?ただの余興で遊戯じゃんか。早く此の船を追い掛けたいなら私が相手の方がアンタ等には都合いいんじゃない?』

私を殺せばいいだけなんだし。挑発的に笑って言う。空気は静まり皆動くことなくただ私が笑っているだけの時間が過ぎる。ははは何警戒しちゃってんの?私なんか単なる餓鬼でしょ?

『やだ?ねぇ、殺ろうよ』

「いいぜぇ嬢ちゃん」

「頭!?」

出てきたのは前にいた賊より一回りでかいさっきスパルトスと交戦してた男。へーアンタが頭?おー雰囲気あるぅ。如何にもって感じじゃん。厳ついけど顔悪い訳じゃないし、話わかるやつっぽいし。

「オレ達賊は楽しいことが好きだからなぁ!」

『ははー良いことじゃないか。よしじゃあ其方の船行こうか。此奴等先逃がすよー?』

「あぁ。力ずくで奪うのが賊だ!余興は楽しませてもらおう!」

『じゃあ私はアンタ等から…』

命でも奪ってやろうかな。口には出さないけどにまにまにやにやと笑う。船の間に跨がる様に架かった木の板を渡る。賊の船に辿り着いたら、木の板を圧し折って海に落ちていくのを見る。特に理由はないけど。あえて言うなら此方に来れないように。え、誰か何か言った?わーぎゃー煩いんだけど猿か、あ"?
今まで自分が乗っていた船の上にいる言葉を交えた人達を見据える。

『其じゃそーゆうことだから早く行ってくんない?あ、此商品だよねごめん借りる』

「嬢ちゃん!」

『んー?あー……大丈夫大丈夫。多分死なない』

此処では。赤い髪の男、スパルトスと視線が合った気がしたけど無視し、後ろ手に手を降って賊に向き合った。船が進み出したのを目の端に確かめてまた笑う。飛びこんでやるよ自ら。火に。余裕に不敵に笑って船の縁にたった私を囲んだ賊達。本当らしいね。楽しいの好きってのは。皆汚ならしい顔を歪ませて武器を構えてる。

『じゃーぁ、どーする?…全員で、来る?』

「囲まれてるってのに余裕そうだな嬢ちゃん」

そうですか?そうですね。普段は魔法もご利用してんですけどねー。さっき勝手に拝借した剣を軽く振って相手を見据える。其を見て前列にいる奴等は何時でも攻撃できる体勢になった。

「かかれ!」

大将の声を筆頭に全員が飛び掛かってきた。其を見て縁を蹴って宙に舞う。賊の頭上を優に飛び越え、誰もいない場所に右足だけ軽い音を発てて降りる。其のまま右足を軸に回転して直ぐに地面を蹴って唖然としてる賊に突っ込む。ふふん。ファナリスには劣るけど脚力には自信があるのだよ!剣の峰や柄を擦れ違い様に敵の腹部や首の後ろに叩き込む。ふはは殺さないなんて私優しい!

『1/3か〜…ちぇ』

真っ直ぐに突っ切った道を振り返ると元いた人数の1/3が力なく倒れていた。まぁ峰打ちだからね。手当たり次第適当に殺してたらせめて半分はいってた!自分に言い訳してると、声を上げて斬りかかってきた。おいおい…馬鹿だろ。気合い入るのはわかるけど、其は力に自信又は相手との実力の差がない限りやっちゃいけないでしょ。今から攻撃しますって言ってんのよ?ま、楽しけりゃ其でいっかなー。上から降ってきた剣に下から自分の剣をぶつけ、キィンと刃が交わる。

『どーしたよ?』

「っく!」

『力業なら勝てるって思った?』

上から力を掛けてるのに何で勝てないんだろうね。力を抜いて身体を横に移動させれば、全体重を掛けた相手は力をぶつける場所が無くなり、呆気なく前に倒れた。首に手刀を当てて意識を落とさせる。

『う〜ん…』

手で首元を押さえて左右に振り首を鳴らす。あ"ー…凝った。首を回すと遠くに見えた自分がさっき出た島。…何か飛んでこっち来る。鳥?…と、人間か。捕まって堪るか。首を押さえてた掌を敵の方に向ける。ルフに命令して風を起こす。

「っな!?」

『あ、違うよ?邪魔されたらヤじゃん。大丈夫私を殺したら消えるよ』

船を覆うように竜巻のような強い風が発生する。静かなでも威力のある風が此の船を守るようにただ其処にある。此で邪魔できないよ王。

『さーどーするー?』

既に飽きちゃってんだよね私。すると大声で笑い出した船員が頭と呼んだ男。其奴が船員等を押さえ込んで私を中心に描かれた半円の中に一歩踏み出した。此奴は油断ならない。隙がないから。

「嬢ちゃん…オレと邪魔なしでサシでやろう」

『…別にいーけど、』

信じられないよー?私敵の言葉を馬鹿正直に信じる程素直でも単純でもないんだわ。残念だけど。まぁ戦略的には其もアリだから文句は言わないけどさ。戦いに正々堂々も卑怯もないしね。

「大丈夫だ。オレが嬢ちゃんと殺りたいだけだからな。此奴等には手は出させない」

『…いーよ。信じる。但し何かしたら…わかるよな』

「いいだろう」

お互いの姿を目に写し剣を構える。身長差凄いんだけど。身長とか体重含めガタイが此処まで違うと少しやりにくいなー。剣は競り合うからなぁ。牽制し合った一触即発の空気の中、誰もが何時だ未だかと固唾を飲む。二人の目が合った途端金属がぶつかる特有の高音が静かだった甲板に響いた。一合二合と剣を振るう。剣が交わる度に火花が散る。

「嬢ちゃん強いな!」

『よく言うよ』

「オレの船に乗らないか?」

『はっジョーダン、っ!?』

其なりの時間をかなりの力で打ち合いをしていると、後方から風を切る音が聞こえた。防壁魔法が発動して当たることはなかったが、後ろを見るとボーガンを構え、当たらなかったことに震えてる船員が一人。

『へー、殺る気満々じゃん?』

顔を歪ませて、今まで以上に踏み込みを強くして剣を大将の剣に打ち付ける。大将が怯んだ其の一瞬の隙に鳩尾に膝を思いっ切り叩き込む。

「っぐ!」

お腹を押さえてその場に膝をついた大将が待てと大声で叫ぶ。あー聴こえない聞こえない。歩を進めてボーガンを持ってる奴の前に行く。腰抜けてんじゃんだっさ。

「ぁ…あ…」

『震えるぐらいなら端っからやってんじゃねーよ』

ビビってへたり込んだ男の足に剣を突き刺す。血飛沫が上がり野太い悲鳴が耳を劈く。剣を引き抜き傷口を圧迫するように踏みつけながら、剣を振って付着した血を飛ばす。あーぁ此借り物なのにー。てか煩い。情けなく喚く男の顎を蹴り上げ浮いた腹に踵を落とす。あ、肋骨逝ったてへ。












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