暖かな気温


□こんにちは太陽滅びろ
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「よし、じゃあ今日から夜尋はオレの娘だ!」

『・・・・・・は?』

やべぇ話が跳びすぎて何言ってるのか理解できねぇ!宛ら言葉の通じない外国にでも飛ばされたかのような気分になったの私だけじゃない筈。期待の眼差しでドラコーンを窺い見てもやっぱり言語が分からず悩んでる模様。誰か私の代わりに言葉を噛み砕いて私に分かりやすく教えてください。

『…えー、と?どーゆう意味?』

「そのまんまだ!オレには子供が一杯居るからな!」

うんうんそうだね。見たこたぁねーけど一杯居るらしいね。只よくわからないよ。何故其処から、

「一人増えても変わらねぇ!」

然うなる?駄目だ。二つの言葉を接続することが出来ない。言いたいことは分かるが、どうして然うなるかがちんぷんかんぷん。どうすればいーんですかこーゆう場合。救いを求めて再びドラコーンを見遣れば、目を閉じて頷いてる。お、期待できそうだ。

「…私もお主の父になろう」


お ま え も か !

畜生裏切られた!つか本当何故そうなんですか!ちょっとアンタ等の脳内にある答えに至る迄を私に理解できる様教えてくれない?マジで。此の儘じゃ私ぼっちで疑問に漂うことになるから。

「私達に頼ればいい。私達は家族だろう」

『……だったらいーなぁ』

「少なくともシンドバッド王も然う思っているだろう」

「シンドバッドは此のシンドリアの親父だからな!夜尋何か余裕で包んじまうさ」

然う言ってでかい手で小さい私の頭を優しく力加減をして撫でてくれる。ドラコーンも優しく目を細めて此方を見ていて、二人に見たことのないお父さんを思い浮かべた。

『そっか!他の皆には一人しか居ないけど、私にはお父さんが二人も居るんだな』

「はは、そういうことになるな」

「おお!すげぇじゃねぇか!」

ストンと、胸に落ちる。今まで何処か諦めてた優しい繋がり。求めていた絆の温もり。あんなに熱くて暑くて仕方がなかった陽の光もどうでもよくなる位どうしようもなく嬉しい。

「早速、父ちゃんって呼んでくれ!」

『え、ちょ……父ちゃん?ドラコーンさんは?』

「…私はなんでもいい。急には無理だろう?」

『…じゃあ、父上!』

そう言えば少し目を反らしたドラコーン。さては照れているな!然し父ちゃんに父上とはヒナホホとドラコーンにぴったりだな。でも其じゃあ…んー、

『…お母さんは?』

「あぁ…ヤムライハ殿とピスティ殿は無理があるな」

「でも他に女って居たか?」

『・・・あ。お母さん居た』

思い浮かんだ顔に思わずぽつりと呟けば、誰だと言わんばかりに此方を向いた二人にぎょっとする。あれ二人は出てこないのかな?答え持ったことで、何と無く二人より優位に立った気分になる。

「誰だ?」

『然う急かすなって!


……ジャーファルだよ!』


・・・・・・・・・。


えー…。其処まで沈黙にならなくても。私の口から出た名前が余っ程意外だったのか口をあんぐりと開けたまま固まる二人。行動が超否定的。

『私此の国でジャーファル以外で、ジャーファル以上にお母さんな人思い浮かばないんだけど』

そう言えば言葉を詰まらせるお二方。彼は節々に母親を思わせるような行動がある。前に子供が好きって聞いたし。時に優しく時に厳しい。野菜食べなかったら怒る。寧ろ此の何処がお母さんじゃないって言うんだ!

『お母さんはジャーファルしか居ないね』

「私がなんですか?」

「だから、ジャーファルはお母、さ…ん……」

……今後ろ振り返ったら負けな気がする。てか今私木の幹に体重掛けて座ってる状態の上、王宮の廊下丸見えな筈なんだけど。どうして彼が近付いてきてるの気付かなかったんだろうか。どうしてこんな頭上で話し掛けられるまで気配が分からなかったんだろうか。二人が口を開けた儘だったのは私の答えでなく、此が原因だったんだろうか。…暑い筈の気温が下がったと思うのは私の気のせいだろうか。

「誰が、お母さんですか?」

錆び付いたロボットの様にゆっくりと首を後ろに回す。座って木の幹に身体を預けてる私の左横に、立って笑顔で此方を見下ろすジャーファル。素晴らしい程にお美しい陰りの一つもない爽やかで完璧な笑みを浮かべてる。何故でしょう危険信号鳴り止みません。

『や、やあ元気かい?』

「ええ、とても」

目を閉じてるから、怒りの度合いが分からない。只黒い。マジで笑みは逆効果って位恐ろしい。気温が下がったのも気のせいであって欲しかったけど気のせいじゃなさそう。一寸前まで溶けそうなんて言ってたのが嘘みたいに寒く感じる。二人も顔を青くしてるから相当なのだろう。

「……で、?楽しそうに話してたじゃないですか。私も混ぜてください」

『え…?いや、えーと…』

ジャーファルをどうにかしてもらおうと、二人に期待の眼差しを向けるも直ぐ様反らされた。おいぃい!?さっき迄と話違うじゃないか!私今超絶困ってんだけど!今こそ頼りがい見せるべきじゃない!?

「お二人は仕事に戻っていいですよ」

ジャーファル君がそう言えば立ち上がって去っていく二人。待て待て待て!え、行っちゃうの?此の状況で私を置いて?私も立って二人についていこうとすれば、肩に手が置かれた。

「夜尋は、暇…ですよねぇ?」

『滅相もない』

肩を軸に向き合わされた。ジリジリと後退すれば容赦なく近付いてくるジャーファル。素晴らしい笑顔の儘。大きく後ろに飛び退いて直ぐに身体を回転させて走る。ジャーファルもついてくる。

『キャーお母さん怖いー』

熱い暑い陽射しの中馬鹿みたいに鬼ごっこをする二人は皆に生暖かい目で見られていた。笑い事じゃないからね!?武器飛んでくるから!捕まったら終わりって思う程鬼の形相だから!

ジャーファルの武器に捕まって説教される未来を想像して苦笑い。やっぱりお母さんじゃないか。走りながら呟いた瞬間に後ろから双蛇ヒョウが飛んできた。え、聞こえてんの?




続く。
(250515)
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