貸出本

□ごろんごろん
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我が家にこたつが来た。
けっこう小さくて四人がギリギリなくらいのやつだ

しかし、まだ秋だ。そんなに早く買ってどうする


………なんて思っていたが


あると良いものだな、こたつとは
風流とも言える蜜柑がちょこん、と乗っている
美味しそうだな、と手を伸ばすと誰かの手と当たった

あ、と声が重なる

顔を上げるとそこには姉さんがいた



「どう?こたつ。」

「うん、あったかくて気持ち良いよ」


すると姉さんはフフフ、と笑って私の正面こたつに座る
私はそれをぼけーっと私は見ていると姉さんがはい、と皮を剥いた蜜柑を差し出してくれた
私は嬉しくてそわそわしながらありがとう、と言うとフフッとまた姉さんは笑った

蜜柑を一つ一つ食べていると姉さんが私の頭をくしゃ、と撫でた
ん、と顔を上げると姉さんはにこにこと笑っている

私は小首を傾げると姉さんは昔の話を話しだした


「貴方は、昔から誰も近づくなという目で私達を見ていたわよね」

「………うん」


そう肯定すると姉さんは私の隣へと腰を下ろしてこたつに入る
そして姉さんはみかんを一つ、食べた


「いろいろあったわよね、エイリア学園とか主にね」

「そうだね……」

「それでも、」


いきなり、ぐいっと肩を引っ張られた
するとぽふっとそのまま私は姉さんの胸に顔を埋める形になる

それでも姉さんは話し続けた


「風介、泣かなかったわよね。何時でも」

「っ……何でそう思うの?」

「あら?貴方の面倒を一番見たのは私なのよ?」

「え…」


気付かなかったでしょう、と姉さんは笑う


「………うん」

「ね、」

「ん…?」

「もう泣いていいのよ」

「…………うん。」


私は少しだけ、姉さんの顔を埋めた


「でも、もう沢山泣いたから良いんだ。」


そう、父さんが居なくなったあの日に沢山私は泣いた
全て欠落したようだった。なにかもを無くした、そんな喪失感が私の心をポッカリと空けた


「私は、これから強くなる必要があるんだから…泣いていられない。だから、私は泣かないよ」


私がそう告げると姉さんはそう、と言って微笑んだ


手に握られていた蜜柑が少しだけ生温くなってしまったがそんなことも気にならない位に清々しい気持ちになれているような気がする

ありがとう、姉さん。
















(きっと貴方がまた、耐えきれなくなる時がくることを私は分かっているから)

(きっと私がまた、耐えきれなくなる時がくることを貴方は分かっていると思うから)

(だから、我慢をせずに私の所に来なさい、)

(我慢が出来なくなったら貴方の元へ行きます)

((だから、その時は))

(優しく抱き締めてあげるわ)
(優しく抱き締めてください)















あとがき
こんばんは。お久しぶりです
藤です
実は相互の件が嬉しすぎて好きすぎる風介くんの小説をと…

瞳子姉さんが風介の面倒見る係だったりいいなあと言う自己満です笑い


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