貸出本

□どこの
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※折(→)兎→←〇〇※
※折紙くん失恋ネタ※
※おじさんがお父さん←※











ある日の休日、僕は何となくにある人に擬態をしてみた

髪の毛は肩につく位のふわっとした感じで身長は僕と同じくらい、全体的にふわふわとした感じの人だ。

その人はつい先日肩を町でぶつけた女の人
名前も素性も知らないけど綺麗な人だったから、何となく


今更だが僕はこの人のことを何も知らない。
どんなことが癖だとか、どんな性格だとか本当に何も。

それがとてもが新鮮だった

僕は基本癖や性格、素性などを全て調べてから擬態するから。


僕の身長と同じくらいの鏡の前で少しくるくる回ったり髪を弄ってみたり

そこで僕はふと思い付いた


これで皆を騙してみよう、と

最近はやっとヒーローの皆と喋れるようになったりして僕も楽しい。
それ故に何かしらのことをしてみたくなった。
皆が僕にイタズラしているように

意外と僕って子供っぽいな、と笑ってしまった

僕は家を出て早速皆が居るだろうかと思われる場所へ行ってみようと脚を動かした


てくてくと慣れないブーツで歩いていると公園で大人数の人が集まっているのを見つけた

良く僕にちょっかいをする虎徹さんとキースさんとネイサンさんとアントニオさん………まあバーナビーさんを抜くいつものメンバーだったりする


女子メンバーが居ないなあと思いながらも四人に手を振って駆け寄った


「皆さーんっこんな時間にこんなところで何してるんです……うあっ!?」


馴れないブーツだからだろう。
僕は四人の前で盛大に転けてしまった

うう…恥ずかしい…
ああもうこんなことになるなら家でずっとくるくる回ってるんだった。でもそんなの近所の方々に見つかったらそれもそれで恥ずかしい。ならどうしろと言うんだ
ああもう家出る出ない云々の前に擬態なんかしなくちゃ良かった。大体この人誰だ。頭がごちゃごちゃしてきた。……………帰りたい。

何時しか言った台詞が頭を巡った

そうだ、帰ろう。帰れば何もなかったように終わるんじゃないか?
きっと皆僕の事なんて気付いてやしない。

そう思い少し腕の力を込めたその時、心配そうな声が上から聞こえた


「おい、大丈夫か?」


その声は、


「あ…虎徹…さ、ん?」


顔を上げると僕に手を差し出している虎徹さんがいた


「なっ何で俺の名前知ってんだ!!」

「ちょっとーアンタこんな娘に手出してたの?」

「ちっ違!!」

「何だ虎徹、娘だけじゃ物足りなくなったのか?」

「違ぇって!!」

「ハハハッ大丈夫かい君?」


僕の一言のせいで何だかややこしく…
と言うか何しれっとキースさん虎徹さんの手弾き飛ばしてるですか!?

どうしようかとオロオロしながらも僕は自分で腕をついて起き上がりペコリとお辞儀をした


「すすすすいません!!えと…皆さん、えと…ご、ご機嫌麗しゅう?」


麗しゅうって何なんだ。
パニクり過ぎだろ…ああもう本当に帰りたい。そして泣きたい。
うああああ…恥ずかしい。

僕は顔を伏せてショートパンツとか言うやつをぐぐっ…と引っ張った

今絶対僕顔真っ赤だ。

うう…帰りたい


「あー…悪ぃけど俺等君と会ったことあったけ…?」

「へ……?」


てっきり、バレていたのかと思っていた僕は思わず間抜けな声を出してしまった


「あ…、その、えと…気付きませんか…?」


僕は周りに居る皆の顔を見ると皆クエスチョンマークを浮かべているように見える

え…バレて、ない…?

虎徹さんの顔をまた見つめると首を傾げられた

僕はおどおどしながらも擬態を解いてみる


「あ……イ、イワン!?」

「すっすいませんごめんなさい!!」

「何故謝るんだいイワンくん?」

「ちょっとは驚きなさいよアンタ!!」

「いやネイサン、お前もな」

「あああああっ本当にすいませんごめんなさい!!」



僕はその後皆に謝り倒した
擬態した理由などもちゃんと話ながら。
キースさんは何時まで経っても何故謝るのか聞いていたのでそれにも謝っていた

全て話終えると皆に笑われた

うう…恥ずかしい…


「ぷぷっ…で、イワンは俺達に仕返ししようとした訳だ…ぶっあはは!!」

「うーん可愛いわねえやっぱり」


ぽんぽん、とブランコに座っている僕に虎徹さんは頭を撫でた

虎徹さん…笑い泣きするほど面白かったですか僕のイタズラは…

僕はしゅん、とするとまた笑われた


「あははははっ!!!!」

「そっそんなに笑わなくて良いじゃないですかあ!!」

「虎徹…確かに笑いすぎだぞ…」


虎徹さんはいやーごめんごめん、と目の端に少し溜まった涙を指で掬って僕を見てニカッと笑った


「いや、でも女のお前も可愛かったぞー」


わしゃわしゃと髪の毛を虎徹さんに撫でられた

虎徹さん、僕の髪の毛がいつもより大変なことに…

僕は無意識に顔を真っ赤にしてしまった


「イワンくん、顔が真っ赤だが大丈夫かい?」

「あ…え、はい…?」


そんなことよりキースさん、顔近いです。お願いですから遠ざけて下さい。なんかもう…

ぼふんっ


「うああああっ!!!!イワンがぶっ倒れたぞ!!」

「良いからそこから退きなさいよアンタ!!」

「いや…皆少しは落ち着いたらどうだ」

「どうしたんだいイワンくん!?大丈夫かい!?」


これが天然じゃなかったら本当に恐ろしい。






「あー…落ち着いたか?」

「え…あ、はい。すいませんありがとうございます…」


ペコリと頭を下げると虎徹さんは気にすんなって!!と言ってまた僕の頭をわしゃわしゃと撫でた

気付けば日はもう既に傾いていて夕日が見える。

今、公園に居るのは僕と虎徹さんだけだ。皆はもう帰ってしまった


「で、今からバニーちゃんの所にでも行くのか?」

「へあ!?」


"バニーちゃん"それは虎徹さんにだけが呼ぶのを許された彼の愛称。昔は嫌がっていたらしいが最近は何も言ってこないらしい

彼にとって虎徹さんは特別な存在のようだ。

少し、何故か羨ましかった


「ププ…ま、行こうとは思ってたんだろう?」

「あ…ぇ…う…あ…その、………はい…」

「そんな縮こまるなって!!」


背中をバシン!!と叩かれた。地味に痛いです虎徹さん…そう思ったが僕は何も言わずにあははと苦笑いをして背中を擦った


「んーこの時間帯だとバニーちゃんのことだからバーにでも居ると思うから行ってこいよ」

「え!?い、今からですか!?」

「んなもんそうに決まってんだろ!!」


そう言って虎徹さんは僕の背中を押した
うわっと少しだけ声が漏れたが虎徹さんは気付いていないらしい。


「上手くバニーちゃん騙してこいよ!!」

「ほ、本当に行くんですか?」

「あったりまえだろ!!頑張れよー」


そう言って虎徹さんは後ろを向き歩き出してしまった

うう…虎徹さん…

泣きそうな気持ちになりながらもバーナビーさんが居そうなバーへと脚を運んだ。
勿論、ちゃんとあの人に擬態をして



高そうなバーの前に僕は居た
中に入るべきか否か…
と言うか入りたくないな…

僕はただそのバーの前でうろうろした後、ぐっと拳を握り締め……………帰ることを決意した

こんなとこに居ても邪魔になるだけだし、そう思い僕はくるりと方向を変えるとドンッと誰かにぶつかってしまった


「ぅ、わ!?」

「あっ」


びたん、と尻餅をつくはずだった

でも、痛く…ない…?

ぶつかった反動で驚いた僕は反射的に目を瞑っていたので、そっと目を開ける


「あ………」

「だっ大丈夫ですか!?」


目の前にはドアップのバーナビーさんの顔。
僕は驚きのあまりうああっと変な声を上げてバーナビーさんの腕の中で暴れてしまった


「ちょ、落ち着いてください!!」

「す、すいませんごめんなさい!!」


一応、バーナビーさんの言った通りに落ち着くことにした
僕はまた終始謝り続けることになった。今日はずっと謝ってばかりだ、嫌になる

バーナビーさんは僕をそっと離してくれた


「あ…その、ありがとうございました。すいません…」

「い、いえ気にしないで下さい」


ペコリと頭を下げる僕にバーナビーさんは笑いかけてくれた


「その、もしお暇だったらなんですが…」


バーナビーさんは吃りながら僕にバーに誘ってくれた

顔を赤くしながら


……これは、もしかしなくても


「ぼ…私なんかが、良いんですか…?」


危うく僕、と言いかけてしまった

バーナビーさんは頬を掻きながら嬉しそうに頷いた


嗚呼、もう…馬鹿みたいだ









次の日
バニーちゃんと折紙が話していたのを見た

これは上手くいったのか?

そう思い俺は二人に近付くと折紙はそそくさとバニーちゃんと俺に会釈だけしてさっさと歩いていってしまった


「どうしたんでしょうか?」

「さあな?あ、そうだ昨日折紙に会ったか?」

「え?会ってませんけど?」

「え?マジで?」

「何で虎徹さんに嘘つかなくちゃいけないんですか」

「あーまあそうだけどさ…」


そこで俺は何かの糸が繋がった

そうか、俺があの時言った後結局折紙バニーちゃんの所行かなかったんだな…だから俺をみてそそくさと…

俺は小さく溜め息を吐くとそう言えば、とバニーちゃんは人差し指を立てた


「昨日バーで可愛い女の子に会ったんですよ」

「へえバニーちゃんが女の子にキョーミ持ったんだ。珍しいな」


バーナビーはええ、まあ…と少し照れたように先程立てた人差し指で頬を掻いた

おじさんどうしたらいいんだ…

バニーちゃんもしかしたらこれは恋の予感とか言うやつじゃないのか?そうなると折紙は失恋するってことになるよな。おじさんバニーちゃんも応援したい所なんだけど折紙のことも応援してあげたんだ…こう言うときはどうすれば良いんだ…ッ!?どちらかに諦めて貰うしか……等と一人で葛藤していると心配そうな声が聞こえた


「大丈夫ですか?」

「え、ああ…うん。大丈夫。大丈夫だとおじさん思うよ」

「何言ってるんですか」

「………気にしないでくれ…」


そうですか、と何時ものように冷たく流された
何だよ、お前のこと考えてやってんのによー
等とブー垂れたいが流石に年的にもうアウトだろうと思い何も言わずにいるとバニーちゃんがごそごそと服を着替え始めた


「ん?もう帰るのか?」

「はい。ちょっと用事があるので」

「もしかしてさっき言ってた女の子にでも会いに行くのかー?」

「なっ…べ、別に僕が誰と会ったって良いでしょう!?」

「へいへーい」

「じゃあもう僕行きますね」

「あ、ちょい待ちー」


俺がバニーちゃんを引き留めると嫌そうな顔をしてバニーちゃんは立ち止まった

俺だってバディな訳だからバディがどんな子に惚れたのか気になる。そうニヤニヤしながら伝えるとバニーちゃんは顔を真っ赤にしながら何で話さなくちゃ…だとか何でニヤニヤしてるんですか…だとかブツブツ文句を言った後に小さく息をすって話し出した


「髪の毛は肩につく位のふわっとした髪で背がドラゴンキッドさん…いや折紙先輩くらいで…まあ、そのー全体的にふわふわしてて笑顔がとても可愛いです。」

それを聞いて俺は口を半開きにしてしまった

それは、もしかして………擬態した折「あっすいません、時間なんでもう僕行きますね!!」

そう言うとハンサムダッシュ並の速さで俺から離れてってしまった

もうバニーちゃんは追えないので俺は折紙を探すことにした


「折紙!!誰か折紙知らないか!?」


俺が必死で廊下を走っているとブルーローズを見付けた

ブルーローズに手を振りながら俺は必死に声をあげた


「ブルーローズ!!折紙知らないか!?」

「知らないけど…そんなに急いでどうしたのよ」

「ちょっと…用があってな…見付けたら連絡くれよな!!」

「ちょっとー!!私が何でそんなことしなくちゃいけないのよ!!」


文句を言われたが俺はあははと苦笑いだけをして走り去った

少しの距離を走った後で振り返るとある後ろ姿が見えた。そこには、


「折紙!!」


びくん、と肩が揺れた瞬間折紙は走り出した
俺も負けじと追うが流石に距離を置きすぎたせいなのか年のせいなのか追い付けなかった

はあはあと息を荒くしているとブルーローズがドラゴンキッドと一緒に来るのが見えた

あ、れ…?
ブルーローズと別れたのは、もっと離れた場所な筈じゃ…

そこで俺はハッと気が付いた。

    ・・
そうか…あれも折紙の…擬態…






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