貸出本

□その時
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※ぱろってます※
※死を予言して泣く精霊、バンシーのお話です※
※エイリア呼び※
※微妙にバンシーと異なる部分があります※
※風介またもや女体化です※


















ある時代、ある村に一人の赤い髪のした少年が居ました。
彼の村にはある言い伝えがありました。それは死を予言して泣く精霊、バンシーが居ると言う言い伝えでした。
その言い伝えが未だに信じられている彼の村では良く泣く女はバンシーだと言われ迫害や虐めを受ける事が多かったのです
実際、バンシーは死を予言するだけであり死を招く訳では無いのだが時が経つにつれ、段々と意味合いが変わり、今となっては死を招く女とこの村では言い伝えられるようになったのだ
そんな言い伝えを信じていない彼はいつも馬鹿馬鹿しい、とちらりと見て去るだけだった
最近はもっと悪くなり良く泣く奴なら誰でもバンシーだと言われ虐められる事が増えてきました

「はあ…(また、泣いてたな)」

そりゃあ誰でも蹴られたり殴られたりしたら泣くだろう
そしてまた虐められる。その繰り返しだ。

俺はいつも行く湖に足を運んだ
ここに来ると落ち着くから良い。
ここ最近、泣きたくても泣けないことが多い。
泣いたら虐められるから。だから、泣けない。
家でも泣いているのを気付かれたらどんな目に合うか分からない、だから泣けない

「っ…(また、助けられなかった…)」

手を伸ばされた。なのに掴んであげられなかった
嗚呼もうどうしようもない。胸がもやもやする、
助けたかった
でもやっぱり人間なんて自分が一番。自分の安全を第一にしてしまう。

「ごめっ…ごめんなっ」

ここでは良く泣いた
だから今日も泣いた。いつもどうりの筈だった。なのに
いきなり後ろから声を掛けられた。どうしたの、だと
驚いて顔を上げるとそこには長い髪をした少し血色の悪い青白い顔、真っ赤に充血をしているように見える眼をした女が居た

「っ、」
「君も此処に来て泣くの?」
「…………」

俺はわざと答えずにいると眉を少し下げて悲しそうに笑った

「ごめん、私なんかに話し掛けられても困るよな、……じゃあ」
「え、ぁ…違っ…」

立ち上がって帰ろうとする女の腕を握った
すると女は驚いた顔をしたかと思えばいきなり汗をだらだらとかき出した

「ゃ…やめろ…」
「お、おいどうしたんだよ」
「やっは、離して!!」

バッと手を振り払われた
すると女は申し訳なさそうに顔を伏せた
俺は少し呆けたけど直ぐに元に戻り女に声を掛けた

「悪ぃ…触られるの嫌だったか?」
「そ、そう言う訳じゃないんだっ」
「、まあ…隣…座れよ」

女は顔を少し上げて良いのか、と問いてきた
その言葉に肯定すると女は少し嬉しそうな顔をして俺の隣に座った
そのまま俺達は他愛もない話を沢山した
時たまくすくす笑う女がとても綺麗で見とれてしまった

「ん?どうかしたのか?」
「いや…綺麗だなアンタ」
「っ/////ななななななな、な、なっ…」
「ーーっしまった…///」

つい思っていた事を口にしてしまった…
隣に居る女は耳まで真っ赤にして膝に顔を埋めてしまったので俺はおろおろしながらも女に話し掛けた

「そ、そう言や俺アンタの名前知らねぇや」

教えてくれないか、と言う意味を込めてそう言うと女は少しだけ膝から顔を離して何かをぼそりと呟いた
俺にはその声が聞こえなくて聞き返すと今度はしっかりと顔を上げ、微笑みながらガゼルと言う名前だと教えてくれた

「良い名前だな、」
「君、は…」
「あ、俺?俺はバーン。宜しくなガゼル」
「ばーん?」
「そう。」
「………そうか」

嬉しそうに笑うガゼルは妖艶で、とても綺麗だった
その後も何度もバーン、と唱えられて顔が赤くなったのは言うまでもない。



それから暫く経って俺とガゼルは仲が良くなった
そして気付いたことがある
ガゼルは何も無いときに突然泣き出すと言うことに
どうしたのかと聞いてもガゼルは泣きながらただ横に首を振ることしかしなかった

ある日ガゼルに会いに行こうとした時に聞いた話に俺は驚くしかなかった

あの湖に居る女ってバンシーの子供らしい

俺はそのまま走ってガゼルに会いにいってみるとまたガゼルは泣いていた

「ガゼル」

ガゼルはびくりと肩を揺らして俺の方を見ると泣きながらもいらっしゃい、と笑い掛けてくれた
俺はガゼルの隣に座ってガゼルの肩を抱くとこてん、と頭を俺の肩に乗せて泣いた
暫くして泣き止んだガゼルを見て頭を撫でながら俺は口を開いた

「なあ、ガゼル…お前さ」
「ん、…?」
「バンシーの、子供って本当か?」
「……、…そう思う…?」
「別に…俺はガゼルがバンシーだろうが関係ないけど」
「…そう。」

そう言って目を瞑ったガゼルに俺はただ前を向いているしかなかった
すぅ、と小さく息を吸い目をそっと開けたガゼルは少しずつ話し出した

「私の母はバンシーと呼ばれる精霊で、ある日人間である父と出会い二人は恋に落ちたらしい」
「………」

俺はただガゼルの話に耳を傾けることにした

「しかしそれを許す人なんて誰も居ませんでした
それでも二人は結ばれ、一人の子供を産みました。女の子の名前はガゼルと名付けられました
そしてこの三人はひっそりと暮らす事にしました。娘もその母も良く泣いては父に抱き締められていましたが三人はとても幸せでした」

目を伏せたガゼルは初めて自分の為の涙を流したのを俺は初めて見た
俺は肩を抱く力を強めるとガゼルは体重を俺に片寄らせた

「しかしその幸せはガゼルが7つの時に終止符を打たれました。村の人々に父と母の存在が知られたからです
ガゼルは何も分からずタンスの中に入れられ父と母に良い子で居るのだと伝えられました
何も知らないガゼルは嬉しそうに返事をしました。それが最後の三人の会話でした
ガゼルの父と母は村人達に殺されていたのです。…………そんなことも知らずに私はタンスの中でずっと父と母を待っていた…けど、帰って来るはずも無かった。この時もう既に父も母も死んでいたのだから」

震えだしたガゼルに俺は正面から抱き締めた
するとガゼルは泣きながら俺の名前を呼んで抱き締め返してくれた
何時もは声を出しては泣かないガゼルが声を上げて泣いた
俺はガゼルが落ち着くまで背中を撫でて名前を呼んでいた



どれだけ時間が経っただろうかもう日が暮れ始めた頃にガゼルは泣き止んだ

「落ち着いたか…?」
「……うん、」

頭をくしゃ、と撫でるとガゼルは顔を伏せた

「どうした?」
「気持ち悪くないのか…、私が」
「何で」
「だっ…だって人間でも精霊でもないただの化け物なんだぞ私はっ!!」
「だから?」
「だ、から…その…君も、気持ち悪いだろう…、」
「大丈夫だよ、」

俺はそっとガゼルの頬を撫でてくい、と顔を上へ上げるとまた目に涙を溜めていた

「俺はガゼルの見方だ。」
「っ…ばーん…」
「だからさ、気にすんなって」

そう言うとガゼルは嬉しそうに笑った





君の涙が止まるその時まで一緒に居てあげる。
そして涙が止まったら二人で上で沢山笑おうか。
お前の笑顔が素敵だってこと俺は知ってるから。
ちゃんと、見せてくれよな
















あとがき
長いわ!!←
自分で書いといて何なんですが長すぎや!!←
いやいやいやでも藤はバンシー本当に好きなんです
儚いです…他人の為に泣く彼女が…

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