main -狗-
□シキの本当の顔
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バーン…
物音が一つも聞こえてこないくらい静かな空間の中、突如、重たい金属製の扉を無造作に開き(と言うよりは、蹴飛ばしたと言った方が正しい…)痛々しい音が狭い空間に響いた。
こちらに向かってくる規則正しいリズムの足音から、部屋の主…いや、俺の所有者が戻ってきた事が分かる。
自分のいるベッドに膝を乗せるなり、身に付けていた刀やコートを床に投げつけ無理矢理顔を近づける。
そして、5秒もしないうちに互いの唇が重なり合い、呼吸が出来なくなる。
こんな生活が始まってからどれぐらいの月日が経ったのだろう…。
「…んっ」
いつもよりも強引で無我夢中になっている様子から、シキに何かがあったのだと思う。
「…っ!!…やめっ…」
必死に逃れようと抵抗をするものの、直ぐに押さえられてしまう。
「…シっ…キ…痛い…っ」
打ち付けてくるスピードに体の感覚が追い付かず、意識が朦朧とする。
「……あぁっ…んぁ…だ…めっ…もう…ぁあああっ!!」
******
意識を手離す前に見た最後のシキの顔は、どこか寂しく、目は赤く充血していた。
疲れが溜まっているのもあると思うが、それとは別に原因がある。
心が支えられなくなって、涙となって流れたのだろうか…
シキがあんな顔をするだなんて知らなかった…。
END