乾貞治

□腐っても苺
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突然だけど、俺の好きな女の子の話をしよう。
その子の名前は、柳蓮。
眉上ぱっつん前髪の、おかっぱ頭が愛らしい。
細い瞳に、長い睫毛。きめの細かい、真っ白な肌が美しい。
身長は、平均より高め。
少し細過ぎるかもしれないけど、決して不健康的では無いすらりとした体型。
見た目の話ばかりしてしまったが、彼女の魅力は勿論内面にもある。
まず、頭が良い。学力だけでは無く、分析力にも優れている。
他者の情報を集め、そこから想像し、まるで相手の心が読めるかのように先を行く。
次に、優しい。その優しさは、決して人を無条件に甘やかすと言う意味では無い。
時には辛辣な言葉を突き付け、相手に嫌われようとも。
その人の為になるならばと、自ら進んで行動する。

……と、誰かに語っているような台詞を心中で呟いている内に、目的地に着いてしまった。
そう、俺は今。その好きな女の子に会いに来た。
遠くは無いけど、昔と違って直ぐ会いに行ける距離には居ない彼女。
つい最近まで連絡先も分からなかったんだけど、ある日偶然再会してまたやり取りが始まった。

「おはよう、貞治」
「ああ、おはよう。蓮」

綺麗な微笑みを見せながら、風に靡く髪を片手で押さえる蓮はやっぱり美人だ。

「さぁ、行くぞ」

そんな……他の同年代と比べてとても大人びた蓮の表情が、周りの人だかりを見つめる度に段々と崩れて行く。
ああ、そう言えば。
非の打ち所の無い彼女だけれど、唯一万人受けはまずしないであろう…変わった趣向を持っている。

「新たなる萌えを探しに!」

蓮は、俗に言う……腐女子。
つまり好きなものは、BL。ボーイズラブ。
男性同士の恋愛物語である。



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