Novels - 02
□女装趣味なアイツとオレと勉強会
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「倉田さんは暑さで頭をやられましたか?」
「元からやられてるわ。暑さとか関係ない」
元からだったらそれはそれでヤバイ。そもそもオレは女の子が好きだし。いや、倉田も女の子に見えるけど! というかなにか言わないとダメだろ!
「えと、えと……お、オレは女の子が好きで、彼女がほしいです!」
「俺は金沢がほしいです」
「えーっ! えと、その……」
予想外の答えに驚く間、倉田は耳元に顔を寄せた。
「結樹、愛してる」
低音で紡がれたその言葉が、オレの躯を一瞬支配した。目を瞬かせ、緩く頭を振る。
「こ、こういう時って……す、好きじゃないのか?」
「好きだから愛してるんだろ」
「そういうもんなの?」
付き合った経験がそんなにないからよく解らん。付き合っても、なぜかすぐに別れるし。
「俺がそうなだけで、他は違うのかもな。金沢は?」
「だからオレは、彼女、ほしいんだけど」
そう言えば、倉田は「へぇ」と面白くなさげに眉を寄せた。しまった。本音がでてしまった。
「なら、俺が金沢の彼女になるわ」
「いやいやいやいや、倉田は男だから! 女装趣味の、男だろ!」
「上等だろ。俺は可愛いし。男の香りを残しつつ女に見えるだろうが」
「確かに女に見えるけど! けどっ……男!」
「悪いな。俺は見た目だけで、完全な女になる気はないから諦めろ」
「あ、諦めろって――」
諦められんわ、と言い返そうとすれば、痺れを切らしたであろう倉田が噛みつくようにキスをしてきた。これでは、憤りは飲み込むしかない。悔しいけど。
すぐに舌先が唇を割り、口内へと侵入する。いとも簡単に。
「ん……っ」
口内を蹂躙されること、何分間。時間は解らない。響く水音に顔が熱くなったし、息苦しさに涙も浮かんだ。頭が霞がかって巧く働かないこともぼんやりとだが解った。
「――……違う、よな」
「……うぁ……?」
荒い息を整えていれば、倉田が小さく呟く。
「無理矢理は、違うか」
一人納得をした倉田は、徐に躯を起こしてオレから離れようとする。この半端なままで。
「待って……中途半端はやめろ。気持ち悪ぃ……」
キスで攻められて勃ったとか。笑い飛ばしたいが笑えねぇし。
「なに、最後までしていいの?」
「違うっ……、た、だ、中途半端は、嫌だ」
ほかっとけば治る熱だが、それでもいまは吐き出したい。中途半端なままでは、気持ち悪いことこの上ないし。