Novels - 02

□女装趣味なアイツとオレと勉強会
3ページ/8ページ

 
 坂井は席を立ち、倉田に近づいてなにやら耳打ちをした。倉田は倉田で小さく頷いて口角を上げる。

「じゃあ、俺たちはコンビニ行ってくるから」

 坂井のその声に、オレと倉田以外は立ち上がった。肩を鳴らす奴や腕を回す奴もいる。そりゃそうか。こんなに勉強したのは久しぶりだしな。

「え? あ、オレも行く!」

 オレも立ち上がろうとした矢先、倉田が声をあげた。オレを睨みながら。

「お前はダメだ。一ミリも進んでねぇだろが。これ以上バカに拍車かけんな」
「なっ――っぅ……はい」

 言い返したかったが、倉田の言うことは尤もなことなので大人しく従うことにした。

 皆を見送り、二人っきりになれば、倉田はオレに近づいて頭を撫でてくる。

「頑張ったらアイスやるから」
「えっ!?」
「好きなやつ食わせてやるよ」

 倉田はその場にあぐらをかいて、その上にオレを無理矢理座らせる。なんか変な感じだ。というより、倉田はオレよりデカイから、すっぽりと収まるのが気に入らない。

「ほら、さっさと進めるぞ」
「お、おう」

 シャーペンを握り直して倉田に手取り足取り教えてもらうこと一時間。頭がパンクしそうだ。

「……うぅ……頭痛い」

 机に突っ伏してリビングのドアを見るが、動かない。まだ帰ってこないのはおかしくないか。コンビニなんてここから五分もかからないのに。

「なぁ、倉田、皆帰ってこねぇんだけど」
「寄り道してんじゃねぇの。嫌なら他のことするか?」
「は? 他ってなに?」

 顔を上げて倉田を見れば、坂井に話しかけられたあとのように口角を上げていた。

「――保健の勉強」
「なんだよそれ。だったら保健の先生とお願いしたいわ」

 保健の勉強は保健の先生とだろ。その方が解りやすいし。そもそも保健の勉強会なんて聞いたことねぇんだけどと一人笑っていれば倉田はオレの手を取って、あろうことか押し倒してきた。

「うぇっ!?」
「俺は金沢としたい。だから、二人っきりにさせてもらった」
「――えっ、ちょっ、保健の勉強ってそっちなのか!?」

 策略で二人っきりとか押し倒されたとか、もうそっちしかない。それ以外は考えられません。

「お前なぁ、そっちもなにもコレしかねぇし」
「待て待て待て! オレは男ですよ」
「知ってる。でも可愛いし。男とか関係なくムラムラくる」

 コイツはなにを言ってるんだ!? 暑いからおかしくなったのか!?
 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ