おまけ。
□カメラの持ち主
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「松崎ー」
「うわ、篠田先輩。また急に……」
「驚いた顔も良いですねー。フィルムに収めても良いですかー?」
「嫌ですよ」
カメラを構えた篠田に、祐は距離を取って拒む。
その時、ふと思った。
「……篠田先輩のカメラ、もっと新しいかと思ってました」
黒い一眼レフのカメラは、所々傷が入っている。祐は触れないギリギリの近さでカメラを見る。
「意外と年代物なんですか?」
「これはー、中古なんですよー」
篠田は祐の視界からカメラを隠すようにして上に持ち上げた。
「中古?……なんか嘘臭い」
祐は疑わしそうに篠田を見る。
そんな祐を見て、篠田はふと頭によぎった。
『嘘臭ぇな、お前』
懐かしいあの人は、元気にしているだろうか。
篠田は手の中にあるカメラを指先で傷をなぞった。
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