短編集

□好きです。けど、言えない。
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みんなから囲まれて、近付くのさえ難しいその人。

その人は、学校で有名な先輩で、女の子にとても人気です。

でも、近付きたいなんて思いません。

話すことも望みません。

遠くからそっと見れるだけで満足です。


僕は、そう思っていました。



「また読書か?田中?」

「あ……青木くん」

名前と同じ地味な田中に話しかけてくれたのは、女子からモテて、男子からは慕われる青木。

「図書館の本、全部読んだんじゃねぇの?」

「そこまでじゃないよっ」

「それは返す本か?」

青木は机に積んでいる本を指差す。

「……うん」

「よし、返してやるよ」

「えっ、いいよ。僕が返すよ」

最近、何故か青木は田中に構ってくる。


図書館に来る人口が少なくて、落ち着くから?

でも、ならどうして僕に話しかけてくれるの?

「これ、どの棚?」

「それは、あそこ……」

田中が高い棚を指差せば、青木は笑う。

「絶対、田中届かないだろ。どうやって取ったんだよ」

楽しそうに笑う青木を田中は見る。


夢みたいだ。

あの青木くんとこうして話してるなんて。


気付いて、ないよね?


僕が、青木くんを好きだって。




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