クルタ族の女
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名無しさんは帰るなり
すぐに流星街に向かった
一年前だから
もういないかもしれない
ということも考えた
それでも会いたかったのか
ただ懐かしむためなのか
足は自然と
瓦礫の上に向かっていた
気まずいまま別れた彼らは
元気にしているだろうか…
名無しさんは
瓦礫がそのまま
残っていることに安心して
ゆっくり腰かけて本を開いた
自然と落ち着いてくる
この本だけは
修行中、
片時も離さずに持っていた
毎日毎日
繰り返し読んだそれは
ところどころ擦り切れている
.