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□幸せの理由
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 幸せだなぁ…って思う時は人それぞれである。



 例えば。何か美味しいものを食べている時が、一番幸せだって人もいれば。
 ただ空を眺め、その膨大なスケールの中を目をつぶり、時の流れをじっくりと感じるのが幸せだって人もいる。




 ただ。オレが幸せだなぁ…って思うのは他でもなく、少年…お前が側にいてくれるだけで幸せだ…





『なぁ、』

『んー?』


 今日もまた。何時ものように、愛しいの恋人。ラビのいる教団へと忍び込み、二人の時間を過ごしていた。


 俺の突然の呼び掛けに、読んでいた本から目だけを俺に向ける。


『お前にとって"幸せ"って、どんな時だ?』


 はぁ?いきなり何言い出すんだ……みたいに眉を寄せ、じっと俺の方を見てくる。



『突然なに、言い出すんさ』


『俺といて"幸せ"かなぁーと思って』


 それは本当。

 誰だってそうだろ?好きな人と一緒にいて、相手が自分といて"幸せ"かどうか気になるのは。


 それと同じだ。
 俺は勿論、ラビといれて"幸せ"過ぎて危ないぐらいだが……ラビどうだ?
 普段、そんなことなんて絶対に言わないし、俺も聞かない。


 でも、今は…



『ははは。ティキ、いきなり何言い出すかと思えば…そんな事か』

 ラビはそう言うと無邪気に笑った。

 そんなラビは、抱き締めたくなるぐらい可愛いのだが。



 "そんな事"なのか?


 俺は少し悲しくなった。

 なんというか、大人気ない話。不安になったのだ。



『っで、どうなんだ?』


 ここで"どうでもいい"とだけは言ってほしくない。

 恐る恐る顔を覗き込み、返事を待つ。


 ラビは少し考えたように天上に目を向け、そして柔らかく笑うと俺の頭を撫でた。



『勿論、幸せさ。好きな人といて幸せじゃないはずないさ』


 子供に言い聞かせるかのように、俺の頭をぽんぽんと叩く。



 何か悔しい…



 俺の方が歳上なのに…何故かラビの方が歳上に見える。



 でも……良かった。俺といて"幸せ"だって感じてくれてるんだ。

 俺だけじゃなく、ラビも……


 安心してしまった俺は、もう一つ聞いてみた。




『ラビにとって一番"幸せ"なことは?』




 ラビが…一番"幸せ"だってことはどんなことだろう…。


 こいつの事だからどうせ、『本を読んでる時』とか言うんだろ?



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