ラグーン

□夏祭り
1ページ/2ページ

御輿囃しが遠くから響いてくる。
人混みのザワザワとした声も一緒に聞こえてきて、『ああ、夏だなぁ…』なんて思った。





 夏祭り





明るい光の中から道を少し外れた薄暗い木々の中。
石段の上に座り、賑やかな通りを見る。
人混みもなく、薄暗いこの場所。
まるで夢から覚めた様な、夢を離れた所から見続けている様なそんな感覚に陥る。

「──綾、キスして…」

浴衣で着飾った彼は、いつもとは違う雰囲気で、それが更に僕の心臓を高鳴らせる。
彼の唇に触れると、柔らかく弾力があり、その唇に触れるだけのキスをした。
唇を放し、彼の顔を見ると、涙に濡れた瞳が屋台の光に照らされて、キラキラ光っている。
ビー玉か飴玉の様で、甘いのかな?なんて思って、つい舌でベロンと左目を舐めた。

「わッ!?」

目の周りに手を当て驚く彼。

「ごめん、甘いのかなって思って」

そう告げると、彼は「そんな訳ないだろ」と目を擦る。
そんな仕草が可愛くて、彼の細い腰を引き寄せた。
その際にめくれる浴衣の裾。
引き寄せる度に、日に焼けていない太股が見える。
その間から手を滑り込ませると、彼は少し身じろいだ。

「どうしたの?」

.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ