ラグーン
□この想いを…。
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出会いの数だけ
別れが有るだなんて
知りたくもなかったよ…
この想いを…。
遠くでベルが鳴る。
もう、別れる時間だなんて。
──そう考えると、なぜか泣きそうになって。
俺は無理矢理、笑顔を作った。
「綾!元気でな」
陣が言う。
「陣くん達もね」
綾が言う。
鮮やかに笑って。
鳴り始めたベルに、父が綾に別れを告げ、母が汽車へと送り出す。
汽車へと乗った綾は、振り返り、閉まるドアへとへだたれた。
不意に開かれた綾の唇。
そしてやわらいだ笑顔。
──綾は
行ってしまった…。
遠くなる汽車が、小さくなって。
消えて行くのもあっと言うまで。
──泣きたくなった。
ずっと。
…言えなかったけど。
本当は。
…好き、だったんだ。
冗談じゃなく。
──本気で。
──だけど。
こんな気持ち。
誰にも言えなくて。
閉ざしてしまった。
自分の中へと。
綾は気付きもしなかったと思う。
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