版権

□虹が架かるとき
1ページ/6ページ

窓の外を見ると雨で、窓を打ち付ける水の音だけが、ポッポッ…、と部屋に響いた。
──あの日から、10年。
世界は、変わることなく続いている。





虹が架かるとき





予想外れの激しい夕立に急に降られ、夢中で走った。
調度、雨宿りの出来そうな場所が見つかり、濡れることを避ける様に二人で駆け込む。


サァ───…


水の玉が、アスファルトを激しく打ち付ける。

『何か、ドラマみたいで笑えるよね』

君は、照れながら俺を見つめていて。
どちらともなく、二人の髪から雨の滴が流れ落ちた。

『仕方ないさ。まさか、雨が降るだなんて思わなかったし』

ぶっきらぼうにそう伝えると、君は軽く笑い飛ばし『そうだよね』と、努めて明るく振る舞っていた。
けれど君は、自分からデートに誘ったからと気にしていたのか、後々『ごめんね…?』と、静かに呟いた。
俺を見上げて。
とても小さな声で。



──あれが最後だなんて、誰が知っていたんだろう…。





.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ