ラグーン
□この想いを…。
3ページ/5ページ
──綾がいなくなってからの毎日が、あまりにも平坦に進むから、辛くて、苦しくて。
けれど、これが現実なのだと自分の中で誰かが呟く。
──あの時、言えずに別れた自分が悪いのだと。
「おはよう、焔君、んで、おめでとニョロヨ!」
「ィッた!てか、何そのテンション!」
家に居座る地球が異性物が、朝から飛びついてくる。
テンションが高いのはいつもの事だけど。
「また全国模試で一位だったんでしょ?母さん鼻高いわ!」
母が代わりに答え、黒い制服を身に付けていた俺の頭を撫で回す。
「かぁさん!痛いって!」
この雰囲気は、どうやら早くに原稿が仕上がったらしい。
「綾ちゃんも一位だったみたいだし!本当に嬉しいわ!」
母は言う。
──今はいない、綾に向かっての褒め言葉を。
綾がこの家にいなくなって、どれだけの月日がたつのだろう。
──俺はいつしか、違う制服に身を包み始め、その服にも馴染んでしまうくらいの間、綾には一度も会ったことがない。
いつしか閉ざした想いも、風化している様で…。
「会長!」
廊下に響きわたる声に振り返る。
「何?」
.