ラグーン

□この想いを…。
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俺の挙動や行動に、不思議に思いながらも笑っていてくれていた、と思う。
その時たまに見せる、何かを見つけた様な笑みはとても綺麗だと、一番好きな笑顔だと思った。
後は、発作を起こしたときに、側にいたら直ぐに駆けつけて抱き上げてくれる、暖かな腕や胸の中が好きだ。
頼っても良いんだと言う、綾の心にも引かれた。

けれど、その淡い想いは、激しく燃え上がり、伝えることなく、閉ざされた。

──男同士で、なんて不自然だし、増してや綾自体が俺を拒むだろう。

…でも、そんな正論付けといて、結局は、傷つく自分が知りたくなかっただけなんだ。


──なんて、俺は汚いんだろうって…、自分を罵った。
こんな自分は、いなくなってしまえって…。



「焔ッ!」
「焔兄!」

倒れいく焔を慌てて父が抱き寄せた。
腕の中の焔は、小さく痙攣を起こし、短く途切れる息で苦しそうに、ハッハッと吐息を放つ。

「慌てるな。急いで病院へ」

父が素早く動く。


──家族ガ揃ッテイルノニ、綾ダケイナイ…


薄れゆく意識の中で、焔はそんなことを考えていた。
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